高齢者と若者が暮らすノビシロハウス「暮らしそのものが孤立を防ぐインフラになっています」
高齢者にとって賃貸物件は借りにくい状況にある。「R65不動産」の調査によると、「高齢者の4人に1人以上が〈年齢を理由〉とした入居拒否を経験」。理由のひとつがオーナー側の「孤独死のリスクを避けたい」から。この問題の解決のため新しいアプローチをしているのが、「ノビシロハウス」の鮎川沙代さんだ。
■若者には家賃半額というメリット
2021年1月に神奈川県藤沢市亀井野にオープンした多世代コミュニティー住宅「ノビシロハウス」。シニア世代と若者が同居するアパートが全国から注目を浴びている。ノビシロハウスを運営する「ノビシロ」(東京都港区)の代表・鮎川さんは、約4年のリサーチと見守り施策の試行錯誤を経て、「高齢者が終末期を迎えて看取られるまでの暮らし」をイメージしていったという。
プランが具体的に動き出したのは、藤沢市にあるアパート1棟を買わないかという話が舞い込んだとき。偶然にも隣の土地は鮎川さんの会社の役員の土地だった。縁を感じて、ノビシロハウスの候補地になった。
「既存のアパートをリノベーションした居住棟は2階建ての全8室。1階がバリアフリー対応の高齢者や車椅子を含めた全世代向け、2階が若者や単身向けの居住スペースという構成です」
2階には、主治医が定期的に自宅訪問し日常の健康管理を行う「ノビシロクリニック藤沢」が併設されている。
「1階のカフェは、入居者同士の交流や、地域住民たちの憩いの場として役立っています」
現在の入居者は70代から90代までの高齢者5人(男性1、女性4)。高齢者の部屋には、不審な動きなどを感知する見守りシステム「IoT」センサーが導入されている。
そして、この住居の要である「コミュニティメイト」と呼ばれる若者は2人。学生とIT企業に勤務する社会人だという。
「コミュニティメイトは、高齢の入居者に対して日常的に声がけをすることと、月に1度の『お茶会』を主催するという条件で、家賃が半額になるというルールです」
20平方メートルのワンルームの家賃は、高齢の入居者が月7万円(管理費1万円)。これに対しコミュニティメイトの家賃は3万5000円(管理費1万円)と半額だ。
「ノビシロハウスは、高齢者施設でもサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)でもなく、高齢者が人とのつながりの中で安心して暮らす居住空間。暮らしそのものが孤立を防ぐインフラになっているのです」
鮎川さんが高齢者と若者が共に暮らすという発想を持つきっかけは、東日本大震災。「何か役に立つことをしたい」と20代後半で生まれ育った佐賀県から上京し、ネットカフェで寝泊まりすること2カ月。電話営業の仕事を見つけて「東京での1人暮らしの部屋」を探すために不動産会社を訪れたが、そこで不本意なことが起こり、不動産仲介業界に対して不信感を覚えたという。
「このときの不信感が、8カ月後に不動産仲介を行う『エドボンド』を立ち上げるきっかけになりました」

















