70代後半では10本超の歯を失う!? 最新の治療事情とは?

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 生涯にわたって元気で生活するには歯の健康が大切で、厚労省は「80歳になっても20本の歯を」をモットーに「8020運動」を提唱している。最新の「歯科疾患実態調査」(2016年)によると、その達成率は51.2%。前回の11年調査より約10ポイント改善したとはいえ、50代から年齢が上がるにつれて歯を失う人が増える。

 そこで、歯を失う原因や治療法について、「東京銀座デンタルクリニック」の歯科医師・金山健夫氏に聞いた。

「主な抜歯の原因は歯周病、う蝕(虫歯)、そして歯が割れたり、ヒビが入ったりする破折です。破折は、歯ぎしりや転倒などで強い力が加わったり、う蝕治療などでの修復が不良だったりすると起こりやすい。これらによって歯が抜けると、ブリッジや入れ歯、インプラントなどで治療することになります」

 8020推進財団の「第2回永久歯の抜歯原因調査」(2018年)によると、抜歯原因は歯周病が最多の37.1%。う蝕(29.2%)、破折(17.8%)と続く。う蝕は歯そのものが壊れる病気だが、歯周病は細菌感染によって歯肉(歯茎)がやせ、歯槽骨が溶けていく病気で、進行すると歯を支えられなくなり抜け落ちる。

 厚労省の「歯科疾患実態調査」の「1人平均喪失歯数の年次推移」を見ると、5歳ごとの年齢階級で歯を失う本数は調査の経過とともに少なくなる傾向だが、それでも最新の2016年版では、50代で2~3本、60代で4~7本、70代後半では10本を超える歯を失っていることが見て取れる。それだけに欠損歯治療が欠かせない。

ブリッジ・入れ歯は健康な歯への負担が問題

 その治療がブリッジ、入れ歯、インプラントの3つ。入れ歯については総入れ歯ではなく、ここでは部分入れ歯を考える。それぞれのメリット、デメリットはどうなのか。

「ブリッジは、その名の通り抜歯した歯の両側の健康な歯を橋渡しのように土台にして人工の歯を作る治療です。保険適用のものなら、治療費が安い。見た目も自然なのがメリットです」

 たとえば一般に抜歯が1本の場合、両サイドの土台の部分と合わせて3本連結のブリッジに。その土台への負荷の大きさがデメリットだ。

「土台になる両サイドの歯は、大きく削る必要があるのがデメリットの一つ。さらに食事でかむときには、土台の2本に3本分の負荷がかかり、その歯の寿命が短くなりやすいのです」

 部分入れ歯は、歯がない部分の型をとり、粘膜の上に乗る歯茎に相当する義歯床と人工歯を残っている歯に留め具で固定する。部分入れ歯も、保険適用の素材なら治療費が安く、短期間で作製できるのがメリットの1つ。ブリッジと異なり、取り外しが可能で、洗浄しやすいのが2つ目だ。では、デメリットは?

「ブリッジと同じように留め具をかける健康な歯への負荷の大きさが一番のデメリット。留め具が周りに見えやすい部分にあると、見た目の悪さも問題です」

 さらに部分入れ歯は、かむ力が弱くなりやすいほか、違和感の問題だけでなく、合わない部分入れ歯を使い続けるのは、口内炎や歯肉がんの原因になることも分かっている。

 ちなみにブリッジも部分入れ歯も、保険適用になる人工歯の素材は、レジンというプラスチック製だ。金属などより耐久性を求めるなら、自費診療になる。

インプラント治療のメリット、デメリットは?

 では、インプラントはどうなのか。まずインプラントは、チタン製人工歯根のことで、歯を失った部分のあごの骨にインプラントを埋め込み、その上に人工歯をかぶせる治療がインプラント治療だ。

「ブリッジや入れ歯のように周りの健康な歯に負担をかけないのが、一番のメリットです。ブリッジや入れ歯の後に、インプラントを考える方が少なくありませんが、そのメリットを重視すると、最初にインプラントを行う方が、結果として周りの歯を守ることができます。さらに土台となる人工歯根がしっかりしているので、元々あった自分の歯のようにしっかりとかむことができ、見た目も違和感がありません。1本から治療することもできます」

 インプラントが失った歯を補う治療であることは、ブリッジや入れ歯と同じだが、ほかの2つと異なるのが、人工歯根を埋めるための外科治療を伴う事と、治療期間がどうしても長くなってしまう事です。

 歯科医師・金山健夫氏が診療する「東京銀座デンタルクリニック」

金山氏は補綴と口腔外科の両方が専門

「ブリッジや入れ歯を含めて失った歯を補う治療は欠損補綴といいます。私は北大歯学部で補綴を専攻。卒業後9年間は補綴の治療に力を入れていましたが、そうするとインプラントの必要性も強く感じるようになりました。そこで名古屋大学の口腔外科の医局に入局。その後は10年間、口腔外科を学んでいます」

 つまり、補綴と口腔外科の両方が専門になる。それぞれの腕を磨いたことは、その勤務先にも見て取れる。非常勤で国立がん研究センター中央病院でも治療にあっている。がんの治療とインプラントが、どう結びつくのか。

「口腔がん、特に歯肉がんではあごの骨ごと腫瘍を切除します。そのままでは生活に支障をきたすので、あごの骨を再建した上でそこにインプラント治療を行うのです」

 抜歯の原因として歯周病がトップなのは、前述した通り。その歯周病が進行すると、あごの骨が溶けて、厚みがなくなってくる。しかし、インプラント治療で、チタン製の土台を埋め込むには、骨の厚みが必要だ。

「そのような方には、あごの骨を再生する治療をした上で、インプラントを行うこともあります」 

 インプラントには、こうした外科治療を伴うことから、ブリッジや入れ歯に比べると、治療期間が長くなりやすい。

 歯科医師・金山健夫氏が診療する「東京銀座デンタルクリニック」

仮歯でかみ合わせを入念にチェックする

 インプラント治療は、土台を埋めて人工歯をかぶせて終わりではない。調整も念入りに行っている。

「最終的に人工歯を装着するまでの間につける仮歯をプロビジョナルレストレーションといいます。歯科技工士さんが、患者さん一人ひとりのかみ合わせをしっかりと確認にして人工歯を作りますが、模型での想定と実際の口の中では往々にして違うことがある。それで仮歯を置いて、高さや見た目の違和感をチェックし、修正します。たとえば仮歯が舌や頬に当たる、頬をかむことが気になる方は多く、そこを微調整。そうやって最適な状態を反映した人工歯を作成し、装着するのです」

 歯がない状態が続くと、歯がずれる。プロビジョナルレストレーションには、歯の移動防止の役割もある。そもそも土台だけあって、歯がないと見た目も悪いから、審美性を保つ意味もあるという。

 インプラントはすべて自費治療のため、保険適用のブリッジや入れ歯に比べると治療費が高い。東京銀座デンタルクリニックの場合、1本33万円~。料金には、インプラント本体、人工歯のほか、手術費、薬代、仮歯、CT撮影代、保証費も含まれる。

 いずれの治療をするにせよ、失った歯だけでなく、周りのチェックが欠かせない。外科治療を伴うインプラントではなおさらだ。

「初回の相談は無料ですから、まずは一度相談にいらしてください」

 グラグラするなど不安な歯がある人は、相談してみてはどうか。

【提供/関連リンク】
 東京銀座デンタルクリニック

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