落合博満さんと初キャンプでまさかの相部屋、すこぶる憂鬱だった1カ月間の一部始終
入団1年目、沖縄・石川の一軍キャンプメンバーに選ばれた。高卒ルーキーは5年近く二軍で下積みするのが当たり前だった時代。星野仙一監督の大きな期待を感じた。それは宿舎の部屋割りにも表れていた。なんと、「三冠王」の落合博満さんと同部屋になったのだ。
1986年12月23日、ロッテとの1対4の「世紀のトレード」で中日に移籍した“時の人”。プロ球界を騒がせた約1カ月前の11月20日、ドラフト会議で中日から2位指名を受けたとき、直後のインタビューで俺はこう答えていた。
「僕は長打を打てるバッターなので、落合博満選手のようなバッターになりたいです」
2年連続3度目の三冠王に輝いたばかりのスーパースター。目標とする選手とキャンプの1カ月間、同じ空間で過ごすことができるなんて思ってもみなかった。
星野監督からは「落合からいろいろ勉強させてもらえ」と言われていたけど、プロ1年生と球界を背負う大打者。立場が違いすぎて、話しかけることなどできない。下っ端が先輩に話しかけられる時代じゃない。落合さんから話しかけられたのは、「部屋子」として“おつかい”を頼まれたときくらいだった。