IRの成功で国民に還元。マカオ政府は16年連続で現金配布を実施

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マカオ政府、IRの売り上げを市民に現金配布

 アジアのラスベガスとも呼ばれ、今やカジノ産業(IRを含む)で世界第1位の規模にまで上り詰めたマカオ。その豊富な税収を財源とし、2008年より16年連続で国民への大規模な現金配布が行われている。

 マカオに居住する永住民の他、臨時居留権を保有する非永住民も対象で、同制度が開始された2008年は1人あたり約8万2000円を現金配布した。そこから段階的な増額が行われ、2023年の現金配布は最大約16万4000円が一括支給される予定となっている。

 この現金配布は新型コロナウイルスの感染拡大下も続いていた。事実上のロックダウンや渡航規制などの影響もありマカオのカジノ産業も致命的なダメージを受けたが、市民への還元が停止することはなかった。

 そればかりか年次支給とは別にマカオ政府で約691億円を捻出し、複数回に渡って電子マネーによる社会福祉手当が市民に配られている。国民還元に積極的なマカオは、まさに理想的なカジノ産業のあり方と言っても過言ではないだろう。

IR売り上げの推移

 マカオのIR売り上げは2013年に約6兆2793億円とピークを迎えている。そこからは毎年数%の減少傾向となるが、2019年の時点でも約5兆905億円と高い水準を維持し続けていた。

 しかし2020年は新型コロナウイルスの影響で前年比79.3%減となる約1兆0521億円まで急落し、事実上のロックダウンが行われた2022年には約7345億円まで落ち込んだ。

 世界各国で次々と新型コロナウイルスに関する規制緩和が進み始めた2023年、IR売り上げ推移が急上昇し、1月を除く2~5月までの間は前年比で最大449.9%増加。4月までに前年の総売り上げを超え、約5カ月で約1兆1302億円に達している。

 新型コロナウイルス前の売り上げに戻すまではもう少し時間がかかりそうだが、すでにその予兆を感じ取れる推移と言えるだろう。マカオの今後に注目したい。

マカオのIR業界の成長と変遷

 マカオのカジノ産業が世界第1位を達成した成長の背景には、2002年に行われたカジノ経営権の対外開放が挙げられる。この対外開放こそ、マカオIR業界の変遷だ。

 それまではマカオのカジノ王「スタンレー・ホー」が経営する企業が独占していたが、対外開放をキッカケに世界中から投資資金が流入。ギャラクシー・エンターテイメント・グループや、ウィン・リゾーツなどの大手カジノオペレーター企業が続々と参入した。

 2003年には中国本土からの個人旅行の緩和措置が行われ、マカオには観光客が急増。それと比例し、世界最先端のカジノホテルやIR の建設が次々と進み、2011年までに「サンズ・マカオ」「ウィン・マカオ」「ベネチアン・マカオ」「ギャラクシー・マカオ」など、世界的に有名なIRが誕生した。

 新型コロナウイルスによる業績悪化から再び栄光への扉が開き始めたマカオ。今後のIR業界の成長を見届けていこう。

日本のIRは国民に還元なるか?

 全国民に対し16年連続で大規模な現金配布を続けるマカオ政府だが、それを可能にしているのがIRの成功、つまり2002年から始まった海外からの投資資金流入だ。

 では日本のIRはどうだろうか? 日本の企業20社により約1000億円の出資、そして開業資金全体の約4割はアメリカの企業が出資している。

 2023年現在、徐々に出資元が明らかになってきているが、日本のIRもマカオのように国民への還元に繋がるのか気になるところ。具体的に「現金を配布する」とは公言していないが、IRからの税収は社会保障や社会福祉、公共事業など様々な目的に使われる。

 結果的には、間接的ではあるが全国民の経済的負担が軽減されるだろう。しかし過去の日本の政策を見る限り、残念ながら現金配布には消極的なのではないかと感じている。

 マカオの成功事例から学び、政府と国民の協力によってマカオと同様の成果を実現することに期待だ。

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