高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄
「利上げの是非について適切に判断したい」──。今月18、19日に予定される金融政策決定会合に関し、日銀の植田総裁は1日の講演で、こう表明した。今年1月に実施した前回利上げから約11カ月。利上げに慎重な高市政権の顔色をうかがう日銀がいよいよ重い腰を上げそうだが、1回こっきりでは肝心の物価高対策には効果薄だ。
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市場は植田発言を12月利上げに向けた「地ならし」と受け止め、円相場が一時1ドル=154円67銭まで上昇。日米金利差の縮小を意識した円買いドル売りが進んだが、一夜明けた2日は反動から円売りが優勢に。あれよという間に一時、1ドル=156円台に突入した。
2日の債券市場は、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時1.880%と17年半ぶりの高水準になった。日経平均は利上げ観測が重しとなり、前日比17銭高の4万9303円45銭と、横ばいで取引終了。小幅な値動きにとどまった。
市場は12月利上げを見据えた動きを見せるが、実際に日銀が利上げに踏み切るかどうかは不透明だ。高市首相のブレーンのひとりであり、積極財政派で知られる前日銀副総裁の若田部昌澄早大教授は日経新聞(11月28日付)のインタビューで、市場で強まる「12月もしくは来年1月の利上げ」について「相当強い理由が必要で、よほど確信がないと難しいだろう」と牽制。高市首相が繰り返す「マクロ経済政策の最終責任は政府にある」とのスタンスも、利上げ判断に影を落とす。
もっとも、円安・物価高に苦しむ国民からすれば、政権との距離感を見極めつつ、利上げがもたらす景気悪化に配慮しなければならない日銀の“苦悶”など知ったことではない。3年以上も続くインフレを抑制し、足元の円安基調に歯止めをかけるには利上げ待ったなしだが、たった1回だけで効果があるのか。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「結論から言えば、12月利上げの1回きりでは、継続的なインフレ抑制は期待できません。前回利上げから日米の長短金利差は縮まっていますが、円安は修正されていない。実質金利がマイナスのまま、円安圧力がかかっているのに、日銀が政府の顔色をうかがっているからです。インフレファイターの役割を果たせないことが市場に見透かされています。今年4月には追加利上げへの期待が膨らみ円高に振れたけれども、日銀はトランプ関税を理由に利上げを見送り続けて後手に回りました。これまで通り、政府の顔色をうかがっているようでは、1回利上げしたところで元のもくあみです」


















