五木寛之 流されゆく日々
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連載10493 痛みについて考える <3>
(昨日のつづき) 『慢性痛のサイエンス』(半場道子著)の序を読むと、ほう、と目のウロコが落ちるようなことが書いてある。 まず「慢性痛は急性痛が長引いたものではない」 私は急性痛が長引いたも…
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連載10492 痛みについて考える <2>
(昨日のつづき) 『痛みについて考える』というタイトルの連載をゲンダイ紙上で始めた初日、同じゲンダイの健康特集で『慢性疼痛』に関する記事が掲載されたのには驚いた。偶然の一致だが、それだけ「痛み」に…
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連載10491 痛みについて考える <1>
きょうも痛む脚を引きずりながら歩いている。 左脚のふくらはぎ、膝、太腿などが動かすと痛むのだ。片脚を引きずるようにして歩くようになってから、3年近くがたつ。 戦後70余年、一度も病院に行った…
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連載10490回 大変動の時が近づく <5>
(昨日のつづき) あんたが縁起でもない文章を書くからいけないんだよ、と見当ちがいの批判を受けた。 北海道はじめての震度7の地震である。 ニュース番組のドローンで撮影した山崩れの映像を見て、…
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連載10489回 大変動の時が近づく <4>
(昨日のつづき) 世の中が大変なことにならなくても、こちらの一身上に大変なことが起こるかもしれない。 「さくらももこさん、残念だったね」 「早過ぎる去り方ですよね。人はいつ何が起こるか、わから…
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連載10488回 大変動の時が近づく <3>
(昨日のつづき) 強力台風の来襲でマスコミは大騒ぎだ。テレビの張り切りようもすごい。 こうして眺めていると、ジャーナリズムとは、つくづく罪深い仕事だと思われてくる。 国民の不幸や人々の苦し…
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連載10487回 大変動の時が近づく <2>
(昨日のつづき) 新聞や雑誌、テレビなどで、現状の分析や将来の予測などが大きく扱われる。未来予測の新書なども良く売れているようだ。 これまで将来の予測といえば、かなり先の未来について語られるこ…
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連載10486回 大変動の時が近づく <1>
地球温暖化の問題が全世界を騒がせたのは、いつの頃のことだっただろうか。 なんとなくずいぶん昔だったような気がする。ひとしきり騒いで、それからいつのまにか忘れられたような感じになっていた。 し…
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連載10485回 新しい本が出ました <5>
(昨日のつづき) 「イツキさんが、新しい本が出ました、なんて言っても余りピンときませんね」 「なぜだい」 「2、3年に一冊、新刊を出す人ならともかく、イツキさんは2、3カ月に一冊ぐらいの割り合い…
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連載10484回 新しい本が出ました <4>
(昨日のつづき) このところ妙な天候が続いている。テレビをつけても、やたらと天気に関するニュースが多い。 地球環境の変化が騒がれたのは、どれくらい以前のことだったのだろう。なんとなく忘れられて…
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連載10483回 新しい本が出ました <3>
(昨日のつづき) 『哲学に何ができるか』(抄)の内容紹介の続きである。廣松渉さんとの対話を一冊にまとめたこの本は、目次だけ眺めるといかにも難しそうに見えないこともない。 第二章『同時代の哲学』で…
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連載10482回 新しい本が出ました <2>
(昨日のつづき) 廣松渉との共著『哲学に何ができるか』(世界書院)の話の続きである。 この本は朝日出版社から刊行されたあと、かなりたって中公文庫に収録された。解説は笠井潔さんが書いてくれた。文…
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連載10481回 新しい本が出ました <1>
人が書いた本の紹介ばかりしていないで、自分が出した新刊のことを書いてください、と担当編集者に言われた。 ほめるにしても、けなすにしても他人の本については書きやすいのである。それが自分の本となると…
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連載10480回 最近読んだ本の中から <5>
(昨日のつづき) また台風がやってきた。日曜日には鹿児島で講演しなければならない。はたして土曜日の飛行機がちゃんと飛ぶのかどうか気がかりである。 それにしても、地震、津波、台風、豪雨と、なんと…
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連載10479回 最近読んだ本の中から <4>
(昨日のつづき) 『無葬社会』(鵜飼秀徳著/日経BP社)について再び書く。<彷徨う遺体 変わる仏教>という副題のついているこの本は、何度読んでもすこぶる刺激的だ。 団塊の世代という巨大な集団が一…
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連載10478回 最近読んだ本の中から <3>
(昨日のつづき) ふと思い出して、本棚から一冊の本を引っぱりだした。このところ評論めいた固い文章ばかり読んで、頭が乾いた感じだったので、なにか湿り気をあたえたくなってきたのだ。 こういう時には…
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連載10477回 最近読んだ本の中から <2>
(昨日のつづき) アメリカのミステリー・アクション小説を立て続けに4、5冊読んだら、頭がふやけたようになってしまった。バスタブの中でぬる目の湯につかりながら読んだせいかもしれない。 いつの頃か…
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連載10476回 最近読んだ本の中から <1>
今週、読んだ本のなかで、とびきり刺戟的だったのが『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』(大澤真幸著/KADOKAWA刊)という長い題名の一冊だった。 根が論理的でない私には難かしすぎる本かも、…
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連載10475回 あの夏を遠く離れて <5>
(昨日のつづき) 私たちは情報はお上から配給されるものだと思っていた。自分で本当の情報を探すなどということは、スパイの仕事だと思っていた。 そして国に都合のいい情報だけを信じて、唯唯諾諾とそれ…
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連載10474回 あの夏を遠く離れて <4>
(昨日のつづき) 格差が問題になっている。もちろん経済的格差についての議論がほとんどだ。一握りの超富裕層と大多数の貧しい大衆、というのが、その図面だが、現実はそれほど単純ではないだろう。 超富…