没後100年ドラマ「夏目漱石の妻」を見て〈作家・夏目漱石〉と〈俳優・長谷川博己〉の姿が重なって見えた
英国留学で顕在化した神経症や、小説家への夢を封印して英語教師として過ごす鬱屈を抱える漱石。家族愛に恵まれずに育ち、妻や子供たちとの接し方が不器用な漱石。ある時は沈黙し、ある時は激高する漱石。長谷川は、メリハリのある演技で「素顔の文豪」を造形していった。
また鈴木京香と共演した「セカンドバージン」(NHK、10年)もそうだったが、長谷川は共演相手の女優を自然に立て、輝かせるような演技ができる俳優だ。それが本作でも生かされていく。鏡子役は当時「はじめまして、愛しています。」(テレビ朝日系)を終えたばかりの尾野真千子だった。
鏡子は貴族院書記官長の長女で、お嬢さま育ち。結婚後も朝寝坊の癖が直らない。気難しい漱石に従いながらも、自分の意志を通す芯の強さを持っている。
尾野は、漱石の言う「立派な悪妻」の喜怒哀楽を全身で見事に表現。長谷川と尾野が対峙する場面だけでも、本作を見る価値は十分にあった。
原案は鏡子の語りを筆録した「漱石の思い出」。脚本はベテランの池端俊策。この池端が4年後に書くことになるのが、長谷川主演のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」だ。漱石が「吾輩は猫である」で注目されてから、49歳で亡くなるまで、わずか10年余り。創作に邁進していく「作家・夏目漱石」と、当時39歳だった「俳優・長谷川博己」の姿が重なって見えた。



















