著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

オトコたちが主役の食ドラマが大繁盛していた夏

公開日: 更新日:

 今からちょうど10年前、2016年の真夏は、オトコたちが主役の〈食ドラマ〉が大繁盛していた。1本目はドラマ24「侠飯~おとこめし~」(テレビ東京系)だ。三流大学に通う良太(柄本時生)は就活の真っ最中。討ち死にの日々が続いていたが、ひょんなことから逃げ込んできたヤクザの柳刃(生瀬勝久)と同居するハメになる。

 しかもこの柳刃という男、出自や経緯はまったく不明だが、料理の腕前がプロ並みなのだ。毎回のお楽しみは、柳刃が披露する安くて簡単でうまい料理である。「焦がし醤油のにんにくチャーハン」や「塩辛カレーリゾット」など、料理に不慣れなオトコでも実際に作れそうな品が登場した。「キッチンは俺のシマ(縄張り)だ!」というタンカに嘘はない。

 また、このドラマのもうひとつのキモは、料理について語る柳刃の言葉が、そのまま就活中の良太へのアドバイスになっていることだ。「どんな食材も工夫次第(=大学のランクなど関係ない)」「他人の家の味をうらやむ必要はない(=自分の個性を大事にしろ)」などの名言が並んだ。「孤独のグルメ」とは、またひと味違うアプローチの〈食ドラマ〉であり、夏バテ対策にも有効な深夜の佳作だった。

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