復活優勝でも見え隠れする大の里の課題 幕内上位陣のわずかなズレで予期せぬ展開になった9月場所
先月の秋場所は、横綱大の里が大関安青錦との千秋楽・相星決戦を制し、1年ぶりの優勝を飾った。
優勝インタビューで見せた涙はよかった。左肩のケガがあってこの1年、思うような相撲が取れなかった。「本当にまた優勝できるのかなと考えた時期もあった」と心中を吐露した。相当な不安や重圧と戦ってきたのだろう。見事に乗り越えての賜杯。大の里、おめでとう。
■連敗、のち会心相撲
序盤は、立ち合いで押せないと引いてしまう悪い癖がのぞいたが、だんだん、持ち前の馬力や右差しで力強く前へ出る相撲が出てくるように。この1年、分が悪かった新鋭の伯乃富士(10日目)と藤ノ川(11日目)を、ともに右を差して一気に寄り切った。3連敗中の熱海富士(12日目)も右下手をとって出し投げで下、し、難敵を連日退けた。
この時点で単独トップの1敗。ハイレベルの優勝か、と思わせたが、ここから2連敗。難所を乗りきって「よし、これでいける」と優勝の2文字が頭にチラついて勝ち急いだようにみえる。合口のいい霧島、調子の上がらない琴桜に続けて不覚をとった。このあたり、まだ完全復活とはいえなそうだ。それでも千秋楽は吹っ切れて、もろ手突きから一気に出る会心の相撲を見せてくれた。
■もうひとつの課題
最終成績は12勝3敗。次は、本人も自覚するようにハイレベルな優勝が求められる。
課題は引き癖だけではない。大の里にはもうひとつ、「土俵際の詰めの甘さ」が見え隠れする。馬力で土俵際まで持っていっても、かわされたり、投げを打たれたり、時にバタバタするのだ。今回の終盤2連敗も、ともに土俵際で逆転されたものだ。
復活してきた横綱を倒そうと、対戦相手はより研究し、土俵際を狙ってくるだろう。大の里はこれをどう克服するか、次の九州場所では「大の里の土俵際」に要注目だ。
■「機運」生みたい安青錦
大の里に敗れたものの、11勝4敗で「準優勝」の安青錦。左足のケガが癒えず、場所前は関取と相撲を取る稽古ができなかった。序盤で3連敗し、今回はさすがに厳しいように見えた。
けれども、「いつも通りやればいいんだ」という師匠の安治川親方(元関脇安美錦)の言葉で軌道に乗って8連勝。いったい、足が治ったらどこまで強くなるのかと思わせた。
綱とりの行方をどうみるか。横綱昇進の推薦について、横綱審議委員会の内規は「大関で2場所連続優勝か、それに準ずる成績」と定める。しかし、番付編成を担う協会審判部の浅香山部長(元大関魁皇)は千秋楽の打ち出し後に、優勝に準ずるといっても、「11勝ではなかなか厳しい」とコメント。来場所の「綱とり場所」に慎重な見方を示した。現時点ではもっともだろう。
ただもし、場所に入って快進撃を続け、終盤に横綱も撃破し、高いレベルの優勝を遂げたら……。新横綱誕生への機運や動きが一気に生まれる可能性もあるのではないか。まずはケガの回復を祈る。


















