介護
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末期がんの85歳男性「死ぬ思いでお惣菜を買ってきて、お粥をなんとか食べたけど…」
在宅医療は、患者さんのご自宅に上がり込み、時に生活全般にわたってサポートを行う医療です。だからこそ、患者さんやご家族が私たちを信頼し、受け入れてくださって初めて成り立ちます。 医師をはじめとした在宅スタッフは常に患者さんやご...
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最期まで自宅で介護したい…現実との葛藤
在宅医療を始める患者さんの中には、積極的な治療を望まず、自宅で残された時間を自然に過ごし、最期を迎えようとする方がいらっしゃいます。 そのような患者さんを介護するご家族は、不治の病に対する焦りのようなものは落ち着くものの、物...
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(47)父との思い出話も、私の幼い頃の記憶も、もう共有できないのだ
親が亡くなると、手続きの多さに驚く。例えば相続には「3カ月以内に承認か放棄を決める」「10カ月以内に相続税を現金で納める」といった期限がある。 私の場合は幸か不幸か、父が税金の対象になるほどの財産を残しておらず、実際の手続き...
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薬剤師の何げない言葉からわかった患者家族の意外な状況
在宅医療を導入すると、それまで見えなかった患者さんのご家庭が抱えるさまざまな問題が明らかになることがあります。 問題の内容は、患者さんの病状に関することだけにとどまりません。患者さんの性格に起因するトラブル、経済的な問題、ご...
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(46)年金だけではまかなえない。「生きる」のはあと何年──
母の83歳の誕生日、鉢植えのシクラメンを抱えて施設を訪れた。母は「ありがとう」と言ったきり黙って外を眺めていた。何を思っていたのか、何か言いたいことがあったのかわからない。ただ、確かに「ありがとう」は聞こえた。 後日、介護費...
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末期がんで余命わずかの65歳男性…緩和ケア病棟か自宅療養か
「S状結腸がん末期」の65歳の男性患者さんは、「歩行器を使ってでも、最期まで自分の店に立ちたい」という強い思いから、BSC(ベスト・サポーティブ・ケア)を選択し、私たちのクリニックで在宅医療を始めました。BSCとは、がんに対して積極的...
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(45)死への道のりを心地よくする手配しか、私にはできないのだ
実家が荒れ果てていくのとは逆に、母の施設での生活は少しずつ安定しつつあった。ケアマネジャーというプロが介護のスケジュールを組み立て、医療やリハビリはそれぞれの専門家が担い、職員が24時間態勢でケアをしてくれる。要介護度に応じて介護保...
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有料老人ホームに不満! 入居90日以内なら解約特例制度が適用
クーリング・オフとは消費者が一定の取引において契約の申込みや締結をした場合でも、決められた期間内であれば撤回・解除することができる制度のこと。その名の通り「頭を冷やして考える時間」を設け、本当に必要な契約なのか考える猶予が与えられる...
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自宅で懸命にリハビリ…半年で自力通院できるまでに回復
皮膚とその下の組織に細菌が感染して炎症が起こる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と、腰椎圧迫骨折の治療のために入院していた89歳の女性患者さんが、退院をきっかけに私たちのクリニックで在宅医療を始めることになりました。 入院中、蜂...
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(44)家主がいなくなった実家は想像以上の速さで終末へと向かっていった
空き家になってしまった実家。最初のうちは何度も行き来するけれど、次第に間隔が空くだろうと思い、最低限の管理をお願いするため地元の不動産事務所に月1回の「窓開け・通水サービス」を申し込んだ。ところが、下見を終え、契約日も決まっていたに...
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「市民後見人」…時間をかけてでもなることのメリットとは?
「市民後見人」とは市区町村などが実施する養成講座を受講し、成年後見制度に関する一定の知識を身に付け後見活動を行う人のことを指している。これは司法書士や弁護士などの専門職と違い、その地域をよく知る市民が、市区町村などの支援を受けながら...
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デジタル技術の普及で、より臨機応変な診療が実現できる
在宅医療を受けている患者さんは、必ずしもご家族と同居しているとは限りません。 身寄りがなく独り暮らしをしている高齢の方もいれば、近所に住む息子さんや娘さんが週末だけ訪れて一緒に過ごすといったケースもあります。ご家族が毎回往診...
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(43)小さく手を振り見送る母の姿に、涙が止まらなくなった
母が施設に入った頃、不思議と夢をよく見た。普段は目覚めると忘れてしまうのに、いくつも覚えているものがある。 ひとつは、母が父の遺品でごちゃごちゃになった部屋をてきぱきと整理してくれる夢だった。思わず「あれ、お母さん元気じゃん...
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ソーシャルワーカーが病院の「品格」であるのはなぜか
これまでお話ししてきたように「ケアマネジャー」と「ソーシャルワーカー」は、病気やケガによって障害が生じた患者さんや要介護の高齢者の回復、在宅復帰後の生活を支援する役割を担っています。 どちらも福祉・介護分野の専門職で、患者さ...
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歩行の困りごとはシニアカーで解決…自治体によっては補助金あり
高齢になっても自由に外出し、世間と多くの接点を持つことは生きがいづくりの点でも大切だ。たとえ膝や腰に問題を抱えていても、軽度なら杖や歩行補助器を利用することで自宅にこもりがちになることを避けられるだろう。 では、自宅では何と...
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認知症の症状に配慮し、本人も家族も穏やかに過ごせるよう調整を重ねた
「3年間、本当にありがとうございました。先日、母の告別式を無事に終えることができました。おかげさまで最期まで自宅で見送ることができました。心より感謝申し上げます。どうぞ皆さまにもお伝えください」 これは、先日ご逝去された患者...
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(42)実家に戻って初夏の庭先が目に入った瞬間、言葉を失った
母の施設入所に伴い、1カ月ぶりに実家に戻った。初夏の庭先が目に入った瞬間、言葉を失った。庭木は茂り、雑草はのび放題。誰が見ても、人の出入りがない家だとわかるありさまだった。 真冬に父が急死したときは、庭がこれほど荒れるとは想...
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ソーシャルワーカーの“つなぎ役”の役割が重要なのはなぜか
病気やケガにより障害が生じた患者さんや要介護の高齢者の回復、在宅復帰後の生活を支援する役割を担っているのは、ケアマネジャーだけではありません。「ソーシャルワーカー」も同様です。 ソーシャルワーカーは、一般的に社会福祉士や精神...
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(41)「お父さん、死んでしまったよ」入所の日、母にようやく伝えた
熊本に大雨・洪水警報が出されていた日、私は母を病院から迎え出し、入所予定の施設へと送る日を迎えた。 すでに両親の車をどちらも処分していたため、施設長が迎えの車を厚意で出してくれることになった。病院までは車で30分以上かかる。...
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災害時に要介護者が入所できる「福祉避難所」を確認しておきたい
「福祉避難所」は高齢者や障害者、乳幼児、妊産婦など、一般の避難所で集団生活することが難しい「要配慮者」のための避難所だ。 その必要性は誰もが理解し、どの自治体も平時からリストを作っているはずだが、実際の運営はとても難しい。事...
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入院生活で一番つらいのは「食事」…多くの患者がそう答える
もしも人生の最期が近づいたとき、皆さんは「なにを」「誰と」食べたいと思いますか。 訪問診療を受ける多くの患者さんは、「できるだけ自宅で過ごしたい」「入院はつらい」と願い、病院から家に戻ってきます。自宅に戻った患者さんは、衰え...
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もし災害に襲われ一時避難となったら…深刻な高齢者のトイレ問題
災害時、一定期間の避難生活を送ることを想定した施設のことを「指定避難所」と呼ぶ。主に学校や体育館、公民館などの施設が使われるのだが、あくまで緊急の避難先なので快適に暮らせる場所ではない。 とくに体育館は大勢の人を収容すること...
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怒りっぽく物忘れが目立つ78歳男性…信頼関係の構築から始めた
私たちが訪問診療で伺うのは、ご自宅だけではありません。高齢の患者さんの場合、さまざまな介護施設へ訪問することも少なくありません。たとえば、介護スタッフが24時間常駐する「介護付き有料老人ホーム」、自治体が運営する「特別養護老人ホーム...
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災害時の避難場所を把握しておこう…高齢世帯は行動が遅れる
地震や異常気象により、自宅にとどまることに不安や危険を感じるケースが増えている。度重なる震災の経験から「避難」に関する情報は身近になったものの、誰もが正しく理解しているとは言い難い。とくに高齢世帯は体力面から行動が遅れることがある。...
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「AYA世代」のがん患者の診察が増加…全国に広がる支援事業
最近、訪問診療の現場で、若いがん患者さんを診察する機会が増えています。このような思春期から若年成人の患者さんを「AYA世代(Adolescent and Young Adult)」と呼びます。 高齢のがん末期患者さんの場合は...
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(38)「母と娘」という形は、はっきりと失われた
母の入所先となる施設を仮申し込みしたことで、病院側でも退院に向けた準備が少しずつ進み始めた。母が状況をどこまで理解できるかはわからなかったが、たとえ形式的でも本人に一度確認しておきたいと考えていた。病院のケースワーカーもそれを後押し...
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身体障害者の「有料道路割引制度」を上手に使おう
日本の有料道路料金は障害者の自立と社会経済活動への参加支援として、50%の割引が受けられる。適用になるのは障害者本人が運転する「本人運転」か、障害者本人が乗車している「介護運転」。ただし、これまでは事前に登録した車1台のみが対象で、...
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大切な人の旅立ち…あなたならどんな言葉をかけますか?
脳出血の後、アルツハイマー型認知症や1型糖尿病など複数の病気を抱えながら、3年半にわたり在宅療養を続けていた90歳の女性患者さんがいました。 独立して近くに暮らす娘さんと息子さんが、ほぼ毎日交代で介護に通っていました。 ...
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(37)仕事と介護を両立させるために必要なこと
母の施設探しをするうち、介護に関する話題を目にする機会が増え、他人事ではないと感じるようになってきた。なかでも介護のために離職する人はいまだに多く、社会的な課題としてたびたび取り上げられている。 私は、実家に戻って母の介護を...
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(36)「最善の施設を選んだのだ」と自分に言い聞かせた
候補に挙がった有料老人ホームは、すべて月額の基本的な費用が10万円前後で収まる施設だった。それが母が受け取る予定になっている遺族年金の範囲内で支払える金額の条件だった。 そんな折、数百万円から数千万円の入居金、月額数十万円と...
