暑熱対策が義務化される時代に 貼るだけで暑さの変化がわかる示温シールとは~ファンケル

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「暑さの変化をいち早く察知すること」が新たな焦点に

 ここ数年、猛暑の長期化が日常化する中で、熱中症による死傷者数の増加が社会問題となっている。

 初期症状の見逃しや対応の遅れが重篤化につながることがあるため、現場では「早く気づく仕組み」の必要性が高まっている。

 2025年6月に施行された労働安全衛生規則の改正により、一定条件下での暑熱対策が事業者の義務となり、現場では「暑さの変化をいち早く察知すること」が新たな焦点になっている。

 そうしたニーズの中で、株式会社ファンケルとTOPPAN株式会社が共同開発した体表温の変化を視覚化するシール(仮称)が注目を集めている。導入はあくまで暑さの変化に気づくための支援として位置づけられ、現在は実証と評価を進めている段階だ。

若き日の辛い体験が製品に結実

 示温シールは縦横がそれぞれ3cmのフィルムで、上腕部に貼ることで体表温の変化を色で確認できる。

 変色は約34℃で始まり、36℃付近で人型のピクトグラム(デザイン)がピンクに変わる仕様で、温度が下がれば色が戻る可逆型のタイプだ(社内試験による)

 素材は汗や水に強く剥がれにくい設計で、皮膚刺激性・感作性などの安全性試験は社内基準で評価し、基準を満たしている。

 体表面温度の上昇に伴う色の変化は、本人や周囲の人が状態の変化に気づくための視覚的な手がかりになる。これにより、休憩や給水、冷却などの適切な対応を促すきっかけになる可能性がある。適切な行動が素早く取れるのが一番の大きなメリットになっている。

 そもそもこの示温シールが誕生した背景には同社新規事業推進部係長・阿部征次さんの青春時代の辛くて悲しい経験があるという。

「私は高校生の頃、柔道部に入っていました。3年生の時、後輩の1年生が熱中症で亡くなってしまったんです。15歳という若さで亡くなるなんて、こんな悲しいことはありません」

「そんなことがあったのでファンケルに入ってからも熱中症の予防に関して何か貢献できることはないだろうかとずっと考えていたんですよ」

ファンケル×TOPPANが共同開発

 阿部さんに転機が訪れたのは2022年のこと。TOPPANが「肌に貼れるフィルム」という技術を持っていることを知ったのだ。

「TOPPAN社の「肌に貼れるフィルム」と「熱で消えるインク」この2つを組み合わせれば、熱中症の初期兆候を誰もが簡単に気づける仕組みができるのではないかと思ったのです。そこでTOPPANさんはシール自体の開発と製造を、弊社はシール開発のアイディア提案と活用先の開拓をそれぞれ担当することで、実用化に向けての共同開発がスタートしました」(阿部さん)

 この間、厚生労働省では職場における熱中症による労働災害の増加という現状を鑑み、25年6月から労働安全衛生規則の改正省令を施行。

 WBGT値(暑さ指数)が28度以上、もしくは気温31度以上の環境で連続1時間以上、もしくは1日4時間以上の作業が行われる職場における熱中症対策が義務化され、対策を怠った事業者には罰則が科せられるようになる可能性があることが追い風になり、両社の共同開発に拍車がかかったことはいうまでもないだろう。

安全性に徹底的に配慮

 示温シールは肌に直接貼って使用する。一度貼れば約6時間貼ったままにしておけるというから、それだけアレルギーなどの肌トラブルの可能性も考慮されなくてはならない。

 その点については開発者阿部さんとともに担当の新規事業推進グループの松田妙さんが説明する。

「示温シートはお子さんからご高齢の方まで、そして男性、女性と幅広い方々がご使用になられることが想定されます。ですから『皮膚刺激性』『光毒性』『細胞毒性』『感作性』の4項目については試験しました。その結果、いずれの項目においても基準をクリアしており問題がないことを確認しています。社内の安全性試験では設定した基準を満たしているが、個人差や使用環境によって結果が異なる可能性があるため、使用上の注意を確認していただければと思います」

個々の子どもの体調変化を瞬時に把握

 示温シールの開発に際して、ファンケルでは様ざまなシーンでのシールの活用を想定。大手自動車メーカーの工場勤務者、都心のデパート屋上にあるビヤガーデンのスタッフなどの他、サッカーの試合を観戦するためにスタジアムに集まった観客など熱中症に陥る可能性の高い多くの人たちを対象とした実証実験を予定している。

 その中で同社が特に力を入れているのが小学生に対する実証実験である。というのも、小学生は体温調整がうまく機能しなかったり体調の変化を伝えられないことが多々あるため、熱中症になってしまう子どもも少なくないからだ。そこで、同社の本社がある横浜市の小学校の他、佐賀県の放課後デイサービスの協力を得て実証実験を実施した。

 その結果、多くの教師から「子どもは一人一人体力も体質も違っていますから、水分補給や休憩のタイミングはそれぞれ違っているものです。ところが、このシールを使えばそれが一目で分かるので、とても役に立ちます。水や汗にも強くて剥がれにくいのもいいですね。総合的に見て、私たちにはなくてはならないシールだといえます」との声が寄せられた。

 これに対して松田さんは、「とても嬉しい評価ですね。体温計ですと、まさにその時点での体温しか確認できませんし、そもそも長時間、体温計を身につけておくことはできません。その点、この示温シールなら貼っている間は体表温の変化が常に見えていることになります。実はそれがとても大事なことであり、実験に参加していただいた方にはその点を十分ご理解いただけたのではないでしょうか」と確かな手応えを感じている。

将来は毎日の生活で日常的に使ってもらえるように……

 ファンケルでは今後もさまざまな機会をとらえて実証実験を続け、27年6月から販売を開始する予定だとしている。

 このシールの誕生を誰よりも待ち望んでいるであろう発案者の阿部さんは

「示温シートルはスポット的な使い方ではなく、毎日の安全管理として仕事に従事されている方に日常的に使っていただきたいですね」

「将来的にはどこの企業にも示温シートが当たり前のように常備してあって、真夏日が予想されているような時には忘れずに腕に示温シールを貼っていただく。そして、シールの色を確認して色が変わっていたらすぐに水分補給をしたり休憩を取ったりして早めの行動につなげていただく。そんな使い方をしていただけるようになると嬉しいですね」

と笑顔で夢を語ってくれた。

 暑さによる体調不良は場合によって重篤化することがあるが、早期の気づきと適切な対応が重要だ。

 示温シールは気づきを補う選択肢の一つとして期待されており、今後の実証結果が注目される。

■提供:ファンケル

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