阪神はなぜ甲子園前の“一等地”を買わなかった? 勝負せず、守りも甘い“事なかれ主義”のDNA
「もしもの、失敗を恐れたんでしょうな。阪神電鉄の体質です。触らぬ神にたたりなし、みたいな。事なかれ主義。ミスしなければ、損害はない。まあ、安全安心を第一義とする電鉄会社として、冒険しないのはわかるんですが、そんな根性では勝てる勝負にも勝てない。勝負どころで勝てなかったここ10年の阪神タイガースのルーツがそこにあるような気がしますな」
苦笑が5秒、ため息がまたひとつ。ふうという声とともに吐き出された。
時は流れて、投資家の村上世彰に翻弄され、阪急電鉄の完全子会社になった体たらくは、いわば勝負もしない、守りも甘い阪神電鉄の幼いDNAに帰結する気がする。
跡地を歩くと、あの人の名前がまるで決まりごとのように口に出る。あの人……別当薫である。旧制甲陽中学校の卒業生で、慶大-ノンプロ全大阪を経てタイガースに入った、今でいうイケメン。別当が走塁で大けがをすると卒倒して担架で運ばれる女性がいた、という逸話がある。
彼と、阪神きってのスーパースターの藤村富美男のそりが合わなかった。多分にお山の大将の藤村の若きスター別当への嫉妬心が2人の仲を分けたのだろうが、この確執が球団の激震につながった。


















