「負けてもええ」が28年ぶり赤字で一変…久万オーナーは金庫を開け、野村克也監督を招聘した
オーナーの久万俊二郎は口下手である。知識は人の10倍も持ち合わせている。が、それらを相手に伝えるのに、口の中で言葉が止まる。俗に口下手に悪人はいない、といわれるが、相手の、何より部下の話を聞いてもどかしいと、力ずく、短文で叱る癖があった。
「タイガースなんてちっちゃな会社や」
「タイガース、タイガースと騒ぐんやない」
異動してきたばかりの新任常務を鼻で笑い、一方的に叩くのは、そういう癖のなせるところだったのだろう。
そのちっちゃな会社の帳簿に異変が起き、久万が「みなを集めろ」と緊急に役員を会議室に集めたのは1996年のことである。
この年、阪神タイガースは2年連続最下位。観客動員は5年ぶりに200万人を割り、28年ぶりで「赤字」に転落した。それまで「負けてもええ。赤字にさえならんかったらええ」と言っていた久万は再建に腰を上げる。
「赤字はあかん」
「金庫を開ける。タイガースにカネを使う」


















