さまざまな表情を持つアキハバラの深奥に迷い込む「電影都市秋葉原」Junya Watanabe著
「電影都市秋葉原」Junya Watanabe著
古くは電気街、そして今ではサブカルチャーの聖地としてにぎわい、世界中から人々が押し寄せるアキハバラ。この街に長年通い、街の持つさまざまな表情を撮影してきた写真家による作品集。
ページを開くと、街をよく知る人でもおそらくあまり出会ったことがない秋葉原が現れる。
目覚めたばかりの早朝の秋葉原だ。夜通し、輝いていたネオンも消え、新しい一日が始まったばかりの街は、人通りもまばらで、配送のために積み上げられた黄色いコンテナが真っ赤なビルによく映える。
真っ青に塗られたビルの横には、それよりも小さめの真っ黄色のビル、そして路上にはボディーが青で運転席キャビンが真っ赤なトレーラーが止まっている。
著者は、その風景に「赤、青、黄色。その三色だけで、秋葉原は十分に秋葉原だった」と記す。
街の中では、それらの色がまじりあい、さまざまな色を映し出す。アニメの中から飛び出てきたようなコスプレで街中を歩いている人がいても、誰も振り向かない。それが街の日常だからだ。
秋葉原は伝統が息づく街でもある。老舗の料理屋なども健在だ。
華やかな電飾を浴びながら、ひと時の非日常を味わうために秋葉原に人々は集まる。その一方で、秋葉原に生まれ、ここで暮らしている人々もいる。
著者は、撮影を通して知り合ったそうした住人に頼まれ、秋葉原の一角を占める神田田代町の町会カメラマンとして神田祭にも参加。
祭りの最中、秋葉原と外神田地区の12町会(十二睦)の神輿が中央通りに勢ぞろいすると、色とりどりの法被をまとった人々が埋め尽くす。これも秋葉原のもうひとつの顔である。
電気街としての秋葉原の象徴がラジオセンターだ。ビルのフロアにそれぞれの専門を極めた小さなパーツショップが密集したこの場所は、日本で唯一無二のスポットと言ってもよい。その一つ一つの店の店主や従業員と心を通わせ、写真に収めていく。何千種類ものパーツに囲まれ、人一人が立つのがやっとのスペースに立ちながら、何十年と街を見守り、支えてきた人々の年輪が刻まれた店々には、電気街の歴史が詰まっている。
撮影された店の中には、その後閉店してその長い歴史を閉じてしまった店もあるそうだ。
秋葉原はメイドたちの舞台でもある。
ひとときの癒やしを求め、この街に集まるご主人さまやお嬢さまを出迎えるメイドたちが、「お屋敷」を飛び出し、街を案内するかのように秋葉原のスポットを巡る作品もある。
そして夜更けとともに人通りが少なくなった夜の秋葉原を高所から見下ろす作品まで。秋葉原で長い一日を過ごしながら、街の知られざる深奥にまで迷い込んだ気分にさせてくれる作品集だ。 (芸術新聞社 3300円)



















