北海道の大自然に生きる動物たちの命の輝き「PIRKA北の大地にきらめく息吹」半田菜摘著
「PIRKA北の大地にきらめく息吹」半田菜摘著
北海道の大自然の中で生きる野生動物たちの姿を追い続けてきた写真家の作品集。
厳しい冬を乗り越えて、ようやく迎えた遅い春。遠くの山々にはまだ雪が残り、見渡すばかりの森や草原にもまだ新緑の気配はない。そんな中、エゾシカたちは枯れ草の隙間から顔をのぞかせたわずかな新芽を夢中で味わっている。
次のページでは、エゾユキウサギが仲間たちと日だまりでうたた寝。かと思えば、別の場所ではお気に入りの寝床をめぐって小競り合いが起きている。
季節が進むとともに動物たちの子育てが始まる。
日没前に狩りから戻ったお父さんを出迎えるキタキツネのお母さんと子供たち。一家の一員か、別のページでは、キタキツネの子供がフキの葉から顔をのぞかせる。親離れが迫るその瞳には、新しい世界への不安と好奇心が入り交じっている。
北海道のスーパーアイドル・シマエナガも、子育て中の姿はちょっとイメージとは異なる。換羽期と重なり、ぼさぼさの姿で雛に虫を運び続けるその姿は、子供優先で、なりふり構わずに子育てに励む人間の親と重なる。
表題の「ピリカ」とはアイヌのことばで美しさのこと。著者のレンズは、大自然に生きる動物たちの姿の美しさだけでなく、その命の輝きの美しさまでをもすくいとる。
日頃、患者の命と向き合う看護師として働きながら、仕事の合間を縫ってシャッターを切り続けてきたという著者だからこそ、ひたむきに生きる動物たちの命の尊さを人一倍に感じてきたのだろう。
生まれ落ちたばかりのエゾシカの赤ちゃんとその母親を撮影した作品は、見ているこちらの心まで温かくしてくれる。
以降、陽光が降り注ぐ枝の上で、毛づくろいをする仲むつまじいペアとその子育て風景、親のいない間に向かってきたエゾリスに対して体を膨らませて威嚇する雛たちなどエゾフクロウの一家を追った連作や、なんともいえぬひょうきんで可愛らしいオオコノハズクの雛の巣立ちを追う連作、さらに被写体は、シャチやウトウなど、海や海辺で暮らす生き物たちにも及ぶ。
どの作品も、動物たちが見せるとっておきの表情を捉える。だが、撮影は人知れぬ苦労の連続だ。紫やピンクのルピナスが咲き乱れる花畑のような場所でこちらにつぶらな瞳を向けるエゾシカを捉えた作品は、被写体が山からこの場所に下りて草をはみ始めるまで、9時間も待機してようやく撮影ができたという。
真冬の森や雪原で暮らすエゾモモンガやエゾクロテンなど、極寒をものともせずに暮らす生き物たちを追った作品もある。撮影の苦労がより一層しのばれる作品ではあるが、厳しい自然の中で生きる生き物たちの姿は、より美しく輝く。
作品と同じ場面を撮影した動画にアクセスできるQRコードも添付されている。一人で楽しむだけでなく、誰かにプレゼントしたくなるような写真集だ。
(エイアンドエフ 2695円)



















