クスノキの塊から彫り出した生きものたちの命の輝き「いきものたちのいるところ」
「いきものたちのいるところ」はしもとみお著 大島淳之写真
木彫作家の作品を収めた写真集。
この世で今、現実に生きている生きもの、またはかつて生きていた生きものたちをモデルに、クスノキの塊からその命の輝きそのものを彫り出したような珠玉の作品が並ぶ。
最初のページには、著者のアトリエの一角と思われる場所にあの樺太犬の「タロ」と「ジロ」を従え、どんと構えるウマグマの「シュウ」を中心に、くつろいだように横座りしてお腹を見せる「モイ」や口を開けて何かを訴えているかのような「ママン」、尻尾をピンと上に伸ばして椅子に陣取るご機嫌な「ポチ実」など大小のさまざまな個性豊かな猫たちが取り囲む。
動物好きな読者なら、この冒頭の一ページから、その作品世界に引き込まれてしまうことだろう。
よく見ると、タロとジロの間には、著者の飼い犬の黒柴「月」も記念撮影のようにちゃっかりと写真に納まってる。
もちろん、その月をモデルにした作品もある。戸外で2頭が並んだ写真は、本物の月はちょっと誇らしげ、そして作品の月はちょっと困り顔をしている。
はるか昔、スプートニク2号で人類よりも早く宇宙にいったライカ犬「クドリャフカ」も著者によって永遠の命を得ている。
こうした身近な哺乳類だけでなく、アゲハチョウやスズメの「チヨ」など、昆虫や鳥といった手のひらサイズの作品があるかと思えば、肩にフクロウを乗せ小山のように堂々としたオランウータンの「キュー」や、背中にホッキョクグマの「シロタ」を乗せ悠々と泳ぐザトウクジラの「ノア」など、迫力満点の生き物たちもいる。
どの作品もそれぞれが名前を持ち、彼ら彼女らがこの世に生を受け、皆に愛されている(た)ことがよくわかる。
著者によると、「彫っていいよ」の声が聞こえる瞬間がある」という。だから「モデルとなる子を自分から探したことはなく、いつも目の前につぎに順番待ちをしてくれていたいきものと、そのために目の前にきてくれた樹が、もうすでにある」のだという。
そうして次々とこの世に「新たな命」を授かって生まれた生きものたち。
タンポポが咲く林の中の日だまりで出会ったスナネコ「アミーラ」とニホンジカの「ペロリ」や、塀の上を歩くネコの「デカオ」、木陰でひとときのだんらんを楽しむコウノトリの「コウ・ヒカリ・ウノ」一家、そして砂漠のような砂原であたりを警戒するガゼルの「ダマーニ」と「サメール」など、それぞれがぴったりの景色の中に配置されると、作品はより一層リアルに心に迫ってくる。
かと思えば、漆黒の宇宙を思わせる暗闇の中で惑星に抱きついたり、三日月に前脚をかけて漂うネコたちなどの幻想的な作品もある。
すべての生きものたちが、たったひとつだけ与えられた「命」の尊さとぬくもりに気づかせてくれるお勧め本。
(辰巳出版 2530円)



















