五木寛之 流されゆく日々
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連載12222回 「孤独」なんてないのかも <5>
(昨日のつづき) いつもこの連載の原稿は、夜おそくギリギリで送稿する。 こんどこそは早目に入稿して安心してもらおうと自分に言いきかせるのが常なのだが、なぜかそうならないのだ。 木曜日の夜、…
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連載12221回 「孤独」なんてないのかも <4>
(昨日のつづき) ひとりぽっちでいる事を「孤独」だと思っている人がいます。 そうではありません。ひとりでいる事に耐えられない人が孤独なのです。 どうしても仲間がほしい。だれかと一緒にいれば…
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連載12220回 「孤独」なんてないのかも <3>
(昨日のつづき) <孤独>という言葉には、どこかにカッコイイ感じがあります。 詩人とか、アーチストが世間に背を向けて独りで歩いている。多くの人たちは、その孤独の歩行者の思いや感情を理解できない。…
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連載12219回 「孤独」なんてないのかも <2>
(昨日のつづき) <おまえ百まで わしゃ九十九まで> とかいう唄の文句を、昔、きいたことがあるような気がします。 よくこの唄の意味を考えてみると、どこかに身勝手な言い草のような感じが、しない…
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連載12218回 「孤独」なんてないのかも <1>
新聞の「人生相談」の欄をよく読みます。 今も昔も、よく話題になるのが「孤独」です。 若い人だと、学校でも友達ができない。家族の中でも、自分だけが孤立しているように感じる。 サラリーマンで…
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連載12217回 町場の昭和歌謡談義 <5>
(昨日のつづき) この連載の冒頭で、<昨日のつづき>とわざわざ書いているのは、事務的な枕言葉ではない。 昭和の夜に一大センセーションを巻きおこした深夜ラジオ番組『きのうの続き』へのノスタルジー…
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連載12216回 町場の昭和歌謡談義 <4>
(昨日のつづき) 横山剣さん、前田和男さん、齋藤孝さんと3人続いたところで、トリはタブレット純さんである。 この人はまことに才筆、というか、文章がしっかりしている。歌い手さんのタレント本は星の…
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連載12215回 町場の昭和歌謡談義──『昭和歌謡界隈の歩き方』── <3>
(昨日のつづき) 齋藤孝さんの『昭和歌謡界隈の歩き方』、横山剣さんの『昭和歌謡イイネ!』とビッグネームが並んだところで、異色の歌謡論を紹介しよう。 前田和男著『「カチューシャ」とウクライナ戦争…
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連載12214回 街場の昭和歌謡談義──『昭和歌謡界隈の歩き方』 <2>
(昨日のつづき) 横山剣さんの昭和歌謡回顧に続いて、齋藤孝さんの『昭和歌謡界隈の歩き方』(白秋社刊)。 この<界隈>という表現が「イイネ!」。つい横山剣さんの口調がうつってしまった。 <人生…
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連載12213回 街場の昭和歌謡談義 <1>
このところ或る共通の雰囲気をもった本が目立っている。造本、装丁、文体などに、どこか共通した雰囲気のある四六判、ソフトカバーの新刊本である。 気軽に手にとって立ち読みもできそうな感じの本だ。カバー…
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連載12212回 私の街場の養生論 <4>
(昨日のつづき) <舌の運動>につづいて大事なのは<耳>だ。<語る>ためには<聴く>ことが前提である。<よく聴く者>は、<よく語る者>。 出すためには入れることが不可欠だ。 年齢を重ねるにつ…
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連載12211回 私の街場の養生論 <3>
(昨日のつづき) まず舌先を思いきり突き出してみる。 その舌先を、水平に開いた口の左右の端に軽くタッチするように左右に軽快に動かす。 最初はギコチナクしか動かなくても、慣れれば素早く左右に…
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連載12210回 私の街場の養生論 <2>
(昨日のつづき) 私は自慢ではないが、ズボラな人間である。 謙遜で言っているのではない。 ときには同じパンツを1週間ずっと履きつづけていることもある。 <面倒くさい> というのが私の…
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連載12209回 私の街場の養生論 <1>
私の「座右の書」の一冊に、多田富雄さんの『免疫の意味論』がある。(といっても、常に雑然と枕元に積みあげてあるだけだから、「座右」というより「枕前の書」というべきかもしれないが) 多田さんとは、金…
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連載12208回 好奇心のままに <3>
(昨日のつづき) 敗戦で一変した少年の思想だが、それにかわる新しい発想は現れてこなかった。 これが内地(日本本土)であれば、少年といえども新聞、雑誌、本などで新しい文化への展望を見出すこともで…
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連載12207回 好奇心のままに <2>
(昨日のつづき) <あすはどうなるかわからない> と、いうのは、子供の頃からの私の固定観念である。 なぜそんな観念にとりつかれたかはわからないが、中学1年生のときの敗戦をもって、その観念は私…
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連載12206回 好奇心のままに <1>
先月末に93歳の誕生日をむかえた。 何人かのかたから、お祝いの品や花などをいただいた。ありがとうございます、と紙面を借りてお礼を申し上げておく。 しかし、後期高齢者が、さらにその上に歳を重ね…
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連載12205回 金沢文芸館のこと <5>
(昨日のつづき) 金沢文芸館内で現在開催中の<五木寛之文庫>の今回の展示テーマは、<活字とラジオのあいだには>。 ちょっと一般の作家展ではお目にかかれない企画である。 不肖、私のラジオのキ…
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連載12204回 金沢文芸館のこと <4>
(前回のつづき) こうして金沢文芸館の2階に、ささやかな〈五木寛之文庫>がオープンした。 以来、今日までさまざまな企画展が開催され続けてきた。<陳列品の展示館>ではなく、その時代ごとの生きた時…
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連載12203回 金沢文芸館のこと <3>
(昨日のつづき) しかし、どうせその手の施設をスタートさせるのならば、市内の一角にひっそりと立つ古い建物の片隅に、ささやかなコーナーを作るというアイディアに、心惹かれるところがあったのも事実である…
