(1)身内すらも“監視し欺く”情報統制…機密流出犯には厳罰、まるで落合博満監督のよう
甲子園のマウンド付近で5度、宙を舞った。7日の広島戦に勝利し、NPB史上最速優勝を決めた阪神の藤川球児監督(45)。指導者経験ゼロから就任し、1年目にして2位以下に大差をつけて2年ぶり7度目の戴冠を果たした。テレビインタビューで笑顔をふりまく姿とは裏腹に、冷静かつシビアにチームを率いた新人監督の素顔に迫る。
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「情報が表に出てしまう唯一の球団。ある意味、うちの欠点」
藤川監督がメディアにこう語ったのは、昨年末のことだ。
人気、注目度は12球団屈指。メディアの数も球界一だ。指揮官は、そうした環境がチームの機密情報が外部に流出する要因になっていると判断。徹底した情報管理を行った。
実際、阪神ではコーチ会議で話し合われた内容が、1時間も経たないうちにコーチやチーム関係者を通じて漏れるケースもあった。
「メディアの皆さんの前では、はっきりとは言わないですけど、やるべきことはやっていきます」
囲み取材で報道陣をけむに巻くのは日常茶飯事。込み入った話をするのは、昨年まで評論家を務めた新聞社の記者くらいだという。
「情報漏れを防ぐのはもちろんですが……」と、コーチ経験のある球団OBがこう言う。
「勝てば大騒ぎ、負ければ手のひらを返して叩く……。喜怒哀楽を軸に報じるのが関西メディアの特質です。特にスポーツ紙はその傾向が顕著。藤川監督は、メディアが敵にも味方にもなることを身をもって知っている。ましてメディアの矢面に立つ阪神の監督職の重圧はハンパない。歴代監督は、メディアに選手起用や作戦についての批判的な意見が出ることで、思いきってタクトを振れなくなるのが常。そんな特異な環境で結果を出すためには、メディアとは付かず離れずの距離感を保つことが肝要だと考えているのです」
球団OBやメディアの評論家に対しても、情報隠しを徹底した。
「先発ローテの構想は?」
「まだ完全には決まっていないんですよ」
「抑えはダレで固定するの?」
「最初は固定しないと思いますけど、徐々に考えていきます」
キャンプ地や甲子園に訪れたOBに戦略や作戦に関して聞かれても、藤川監督は核心ははぐらかした。