五木寛之 流されゆく日々
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連載12202回 金沢文芸館のこと <2>
(昨日のつづき) 前回の原稿で、金沢のことを<第3のふるさと>と書いたのは誤りで、<第4のふるさと>というのが正しい。 生まれた福岡が<第1のふるさと> 育った朝鮮半島が<第2のふるさと>…
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連載12201回 金沢文芸館のこと <1>
金沢へきた。 雨の多い土地柄だが、きょうは降ってはいない。 午後、尾張町の金沢文芸館でテレビ金沢の取材。金沢文芸館は今年で創立20周年を迎える。 地味な存在ながら、地域文芸運動の基点とし…
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連載12200回 中世のうたごえ <12>
(昨日のつづき) 法然一門の若手アイドルともいうべき美少年グループの人気が沸騰し、彼らが催す念仏会が熱狂的な人気を集め、念仏高唱の声が巷にあふれることは、法然一門にとっては危険なことです。念仏だけ…
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連載12199回 中世のうたごえ <11>
(昨日のつづき) 平安時代の<うたごえ>はともかく、現代の<うたごえ>はどうなっているのか。 昭和100年、戦後80年ということで、さまざまな話題がメディアにあふれました。ことに<昭和歌謡>と…
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連載12198回 中世のうたごえ <10>
(昨日のつづき) 旧仏教のセンターである奈良の大寺はもちろんのこと、比叡山も、その他の寺々も、こぞって念仏の流行を批判しました。 <悪人もすくわれる>どころではなく、苦しんでいるアンタたちこそ浄…
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連載12197回 中世のうたごえ <9>
(昨日のつづき) 新しい念仏で大フィーバーをおこした法然の<口称念仏>ですが、それが社会現象となるには、さまざまな要素があります。 法然をしたって集ってくる門下には、多くの僧がいました。古い寺…
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連載12196回 中世のうたごえ <8>
(前回のつづき) 当時の比叡山は<鎮護国家>の象徴として、その権威は並ぶものなき高貴な山でした。しかも仏教の研鑽だけでなく、天文学、言語学など、あらゆる分野の学問研究においてトップレベルの総合大学…
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連載12195回 中世のうたごえ <7>
(前回のつづき) 仏教にしても、キリスト教にしても、イスラム教にしても、絶対的信仰というものを土台にして成り立つ宗教です。 その<絶対的信仰>は、どこからもたらされるのか。 たぶん、それは…
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連載12194回 中世のうたごえ <6>
(昨日のつづき) それまで、われら仏に見捨てられていた者たちにも、救われる道がある、という驚きと感動から、一つの歌がうたわれます。 〽弥陀の救いぞたのもしき 十悪五逆の悪人も 南無阿弥陀仏と唱れ…
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連載12193回 中世のうたごえ <5>
(昨日のつづき) みずからを<海山稼ぐ者>と卑下している人々に対して、その固定観念を笑い飛ばしたのが高野山を降りた名僧、法然でした。 <仏は差別なく、すべての人々を救う> と、彼は説いたので…
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連載12192回 中世のうたごえ <4>
(昨日のつづき) 真宗の念仏について、ひとつの誤解があるようです。 それは「南無阿弥陀仏」という浄土系の念仏が農民や底辺の民衆から支持されて広まったというイメージです。 「悪人往生」の思想が…
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連載12191回 中世のうたごえ <3>
(前回のつづき) 地獄、極楽、というイメージが広く人々のあいだに定着するのもその頃です。 <極楽>のすばらしさは、さまざまに語られますが、それ以上に当時の人々に強烈なインパクトをあたえたのは<地…
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連載12190回 中世のうたごえ <2>
(昨日のつづき) 今様というのは、読んで字の通り「いまどきの」「当世風の」という意味の歌謡です。 まあ、平安時代のニューミュージックといってもいいでしょう。 当初のものは10世紀後半あたり…
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連載12189回 中世のうたごえ <1>
むかしの時代劇というか、チャンバラ映画に、こんなシーンがよくありました。 暗い川ぞいの土手の道。 月もおぼろに、どことなく不隠な気配のなかを、一人の浪人ふうの男が歩いている。 突然、草陰…
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連載12188回 昭和の不可触世界 <3>
(昨日のつづき) <売春防止法>が成立したのは1956年。実際に施行されたのは、翌年からである。 新宿2丁目、その他全国各所で『蛍の光』が合唱された。 しかし、公然と非公然の形は異なっていて…
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連載12187回 昭和の不可触世界 <2>
(昨日のつづき) 大学生のころ、永井荷風の『濹東綺譚』を読んで、その作品の舞台になった玉の井のあたりを歩いたことがある。 戦後10年ちかくたっても、どこかに物語りの舞台となった街の風情は、色濃…
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連載12186回 昭和の不可触世界 <1>
<昭和百年>も、そろそろ種切れのようだ。 これまでさんざん読まされてきたなかで、なぜか書き手があまり触れようとしない部分があるのはなぜだろう。 それは「昭和の売春」世界のことだ。 はっきり…
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連載12185回 昭和落ち穂拾い <10>
(昨日のつづき) <昭和>と、ひとくちに言うけれど、昭和は長い。しかも戦前と戦中、戦後ではまったくちがう。できれば<戦前昭和><戦中昭和><戦後昭和>と、はっきり3つに分けて語ったほうがいいのではあ…
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連載12184回 昭和落ち穂拾い <9>
(昨日のつづき) 昭和の頃は、イラストレーターなどという呼びかたはなかった。<挿絵画家>というのが一般的だった。 当時の物語り性のつよい少年読物を、さらに魅力的にドレスアップするのも挿絵画家の…
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連載12183回 昭和落ち穂拾い <8>
(昨日のつづき) 「昭和歌謡」のブームは、まだ衰えてはいないようだ。 このところ新聞の一ページ広告に、あいかわらず昭和の流行歌のアルバム・全集のたぐいの広告が目立つ。 <流行歌>という言葉には…
