今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに
俺が長く仕えた星野仙一監督はまさに「闘将」だった。試合中、劣勢の展開になるとベンチを蹴飛ばし、選手を怒鳴りつける。試合に勝っても、選手が不甲斐ないプレーをすれば、監督室に呼び出し、鉄拳が飛ぶのは日常茶飯事だった。
今の時代では考えられないが、当時はそれが当たり前だった。2度目の監督時代の1996年、キャンプ地の沖縄・石川のオープン戦で先発した左腕の野口茂樹が2試合連続で大量失点したときは、「おまえはずっと立っとけ!」と一喝。ベンチのバットケースのそばで、試合終了まで直立不動である。そんな様子がテレビ中継に映り込んでいたのだから、今だったら炎上どころの話ではない。
俺も含めて多くの選手が星野監督の鉄拳を食らった。もっとも多かったのは、正捕手を務めた中村武志さんだと思う。
期待の裏返しであるのは間違いないが、前回も書いたように、星野監督には「投手が打たれるのは捕手の責任」という持論があった。それだけに、中村さんは格好の標的だった。
ナゴヤ球場はベンチとバッターボックスが近かった。打席では星野監督の怒声が丸聞こえ。中村さんは「タケシ!」と言われるたびに怯えながら振り向く。いったいダレを相手に試合をやっているのか……という状態だったのは否めない。