孤独のキネマ
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「レニ」ヒトラーに協力した女が見せる恥知らずの抗弁
ナチスの宣伝映画を監督したレニ・リーフェンシュタールの半生を追い、晩年の彼女に密着したドキュメンタリー。11月6日、BDとDVDが発売される。 レニは1902年生まれ。山岳映画で人気を馳せた…
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「キング・オブ・コメディ」演技派が見せた静かなる狂気
ルパート(ロバート・デ・ニーロ)は大物芸人のジェリー(ジェリー・ルイス)に憧れるコメディアン。ある夜、ファンに揉みくちゃにされたジェリーを助けて自分を売り込み、「事務所に電話しろ」と言われる。さっそ…
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「激動の1750日」日本海軍とヤクザ不思議な共通点
先週、神戸山口組系組員2人が山口組系組員に射殺された。抗争の再発を予感させる事件だ。本作は1984年に始まった「山一抗争」がモデル。「神岡組」は山口組、「八矢会」は一和会だ。 構成員1万20…
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「ニュースの真相」ブッシュの軍歴詐称は誤報だったのか
2004年に起きた米CBSの誤報騒動を描く。再選を目指すブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑を報じた「60ミニッツⅡ」の元プロデューサー、メアリー・メイプスの回顧録が原作だ。 04年4月、メアリー(…
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「黒い牡牛」観客は赤狩りの米国民 牛はトランボ自身か
先日DVDが発売された。原案者の「ロバート・リッチ」はダルトン・トランボの別名。米国共産党に関係した「ハリウッド・テン」の一人として職を奪われたトランボが変名で書いた作品だ。アカデミー原案賞を受賞し…
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「ニッポン無責任時代」ヘラヘラ笑う異端児に憧れた時代
クレージーキャッツのヒットシリーズの第1作。60歳以上の人なら2、3回は見たことがあるだろう。 植木等が演じる失業中の男・平均(たいらひとし)は夜のバーで太平洋酒という企業が乗っ取りの危機だ…
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「女系家族」3姉妹の遺産相続争いに妊婦の愛人が加わり…
遺産相続で揉める3姉妹の愛憎を描く。 大阪・船場の老舗「矢島商店」の当主・嘉蔵が死去した。嘉蔵には藤代(京マチ子)、千寿(鳳八千代)、雛子(高田美和)の3姉妹がいる。遺産配分をめぐる親族会議…
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「SF核戦争後の未来・スレッズ」人間がネズミを食べて…
演劇評論家の山田勝仁氏に「すごいドラマだよ」と薦められて観賞した。核による世界戦争を描いたテレビドラマ。英国の公共放送BBCが物理学、医学、心理学などさまざまな分野の権威50人の協力を得て製作した。…
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「遥かなる山の呼び声」去って行く男とすがりつく女の物語
ふらりと現れたガンマンが悪党を退治する映画「シェーン」。本作はその主題曲「遥かなる山の呼び声」をタイトルにした。「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)に続く山田洋次監督と高倉健、倍賞千恵子の作品であ…
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「地獄の黙示録」ウィラードは1945年のマッカーサーか
カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。原案はJ・コンラッドの小説「闇の奥」だ。 1969年夏、ウィラード大尉(マーティン・シーン)は情報司令部に呼ばれ、元作戦将校カーツ大佐(マーロン・ブラン…
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「激動の昭和史 沖縄決戦」沖縄の悲劇を弁証法的に考える
監督は「日本のいちばん長い日」の岡本喜八、脚本は新藤兼人が担当。1945年3~6月の沖縄の死闘を描く。 44年7月、米軍はサイパン島を陥落させ、日本の喉元に匕首(あいくち)を突きつけた。大本…
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「レイルウェイ 運命の旅路」拷問を描いた“反日”映画か?
第2次大戦中、日本軍の捕虜になった英国人の苦悩を描く。主人公のE・ローマクスの実体験を映画化した。 1988年、退役軍人のローマクス(コリン・ファース)は看護師のパティ(ニコール・キッドマン…
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「東京裁判」4時間37分に凝縮された日本人全員の“十字架”
第35回ベルリン国際映画祭国際評論家連盟賞を受賞。渋谷「ユーロスペース」で上映中だ。先日デジタルリマスター版BD&DVDが発売された。 内容はご存じのとおり。1946年5月から48年11月ま…
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「TATTOO[刺青]あり」環境のせいか、それとも殺人鬼か
高橋伴明監督の出世作。本作がきっかけで関根恵子(高橋恵子)と結婚した。1979年1月に起きた三菱銀行人質事件の犯人・梅川昭美がモデルだ。先日BDとDVDが発売された。 竹田明夫(宇崎竜童)は…
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「十三人の刺客」続く残酷描写 長すぎる35分間の斬り合い
1963年の工藤栄一版をリメーク。稲垣吾郎目当てで封切りを見に行き、グロな残酷描写に絶句した女性もいた。 江戸時代後期。将軍の異母弟である明石藩主・松平斉韶(なりつぐ=稲垣)は残虐行為を繰り…
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「フラガール」炭鉱町で女たちはフラダンスに人生を賭けた
蒼井優と山里亮太が結婚した。この「フラガール」で蒼井と共演した山崎静代から山里が紹介を受けたというから、人間どこにチャンスがあるか分からない。本作は常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアン…
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「少年H」水谷豊演じる主人公の父が子に諭す戦争の愚かさ
先日亡くなった降旗康男監督(享年84)の代表作のひとつ。戦中・戦後の世相を描いた。 1941年、神戸に住む小学生のH(吉岡竜輝)は仕立屋の父・盛夫(水谷豊)と家族4人で暮らしている。世間は戦…
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「アマデウス」神は下劣な若造を天才に選んだ
アカデミー賞作品賞など8部門を受賞。先日、BD&DVDのセットが発売された。 モーツァルト(トム・ハルス)の死から32年、宮廷作曲家のサリエリ(F・マーリー・エイブラハム)が「彼を殺したのは…
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艶やかな「地獄門」故・京マチ子さんが演じる悲しき献身愛
京マチ子が亡くなった(享年95)。出演作の「羅生門」(1950年)、「雨月物語」(53年)が国際的な映画賞を獲得、本作はカンヌ国際映画祭グランプリに輝いた。「鍵」(59年)では白い柔肌を、「他人の顔…
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「フェリーニのローマ」戦車と裸馬が駆ける狂乱の環状道路
フェリーニがローマへの愛を捧げた作品。ストーリーはなく、荒唐無稽な映像が続く。「世にも怪奇な物語」(1968年)の「悪魔の首飾り」が好きな人は必見だ。 1930年代、ひとりの若者がローマのア…