阪神の人間模様は小説より面白い 江本孟紀「ベンチがあほやから野球ができん」の12時間後…
エモやんも円くなったなあ。最後列で聞いていた私は、なんだか心地いい夜を過ごせたと今も思う。
1981年8月27日、エモやんは梅田の球団事務所に姿を見せ、球団代表の岡崎義人が「あのな」と言いかけた、その口を手で封じ、すぐ後に「辞めまっさ。クビやのうて、私から退団を申し入れまっさ」と任意引退の権利をとり、さっさと事務所を去った。エモやんの長かったようで短い選手生活はあっけなく終わった。
つい12時間前の8月26日の夜、エモやんは試合中に球場を去った。本拠・甲子園球場のヤクルト戦。首脳陣に向かって投げたあのグラブは今、どこにあるのだろう。
エモやん退団。大阪の新聞は野球の結果より、エモやん騒動が売れた。
「大変だな、阪神担当は。お家騒動ばかりで」と他球団担当の記者からなぐさめられたが、つらくも悲しくもなんともなかった。島倉千代子ではないが、♪人生いろいろ……。阪神の人間模様は小説より面白く、だからこそ熱狂的なファンがおり、だからこそ記事の量も他球団を圧倒したような気がする。


















