本の森
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「私と言葉たち」アーシュラ・K・ル=グウィン著 谷垣暁美訳
「私と言葉たち」アーシュラ・K・ル=グウィン著 谷垣暁美訳 2018年に88歳で亡くなったル=グウィンの晩年のエッセー・書評集。先に翻訳された「暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて」…
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「証し 日本のキリスト者」最相葉月著
「証し 日本のキリスト者」最相葉月著 日本に暮らすキリスト教(カトリック、プロテスタント、正教)の信者は人口の約1.5%、韓国の約30%に比してかなり低い。明治以降、キリスト教関係の教育機関や…
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「女たちの沈黙」パット・バーカー著 北村みちよ訳
「女たちの沈黙」パット・バーカー著 北村みちよ訳 本書冒頭に、ヨーロッパ文学はすべて戦いから始まった、というフィリップ・ロスの「ヒューマン・ステイン」の一節が引かれている。「ヨーロッパ文学がど…
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「マザーツリー」スザンヌ・シマード著 三木直子訳
「マザーツリー」スザンヌ・シマード著 三木直子訳 ジェームズ・キャメロン監督の映画「アバター」には、地下の植物どうしをつなぐ、光り輝く生命を持つネットワークが登場する。その植物どうしをつなぐネ…
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「自転車と女たちの世紀」ハナ・ロス著坂本麻里子訳
「自転車と女たちの世紀」ハナ・ロス著坂本麻里子訳 新型コロナウイルスの蔓延によって自転車の利用者が世界的に急増しているそうだ。温暖化対策、SDGsの面からも、自転車への人気は、コロナ禍の収束以…
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「雑草ラジオ」瀬戸義章著
「雑草ラジオ」瀬戸義章著 1970年代後半、イタリアのアウトノミア運動から生まれた「自由ラジオ」は、その後80年代初めに日本でも国家や企業の規制によらない市民の新しいコミュニケーション手段とし…
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「綿の帝国 グローバル資本主義はいかに生まれたか」スヴェン・ベッカート著、鬼澤忍、佐藤絵里訳
「綿の帝国 グローバル資本主義はいかに生まれたか」スヴェン・ベッカート著、鬼澤忍、佐藤絵里訳 柳田國男は「木綿以前の事」のなかで、室町時代後期に日本国内で木綿が広く普及した原因として、それまで…
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「巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ」竹内早希子著
「巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ」竹内早希子著 醤油、味噌、酒といった伝統的な調味料に欠かせないのが日本独特の巨大な木桶だ。木桶の板は多孔質で目に見えない小さな穴がたくさん開…
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「死者は生者のなかに ホロコーストの考古学」西成彦著
「死者は生者のなかに ホロコーストの考古学」西成彦著 比較文学者である著者は、ポーランド文学、イディッシュ文学にも精通、必然的にホロコースト文学に強い関心を示してきた。本書の「序」には1996…
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「メタモルフォーゼの哲学」エマヌエーレ・コッチャ著 松葉類、宇佐美達朗訳
夢野久作の「ドグラ・マグラ」の中に「胎児の夢」という挿話が出てくる。ヒトの胎児は、母親の子宮内にいる間に、単細胞から多細胞、魚類から爬虫類、そしてサルからヒトへという変化を遂げているのだと。これはヘ…
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「オーウェルの薔薇」レベッカ・ソルニット著 川端康雄、ハーン小路恭子訳
「1936年春のこと、1人の作家が薔薇を植えた」という印象的なフレーズで始まる。「作家」とはジョージ・オーウェル。そう、トランプ政権の誕生、パンデミックの襲来、ロシアのウクライナ侵攻といった不可測な事…
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「街の牧師 祈りといのち」 沼田和也著
「宗教年鑑 令和3(2021)年版」によると「キリスト教系」に分類される宗教団体の総信者数は191万余人で、全宗教団体の総信者数に占める割合は1.06%。思いのほか少ないが、カトリック、プロテスタント…
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「死者と生きる」デルフィーヌ・オルヴィルール著 臼井美子訳
コロナ禍においては、葬儀の形式も変化した。2020年には家族葬が40.9%、一般葬は48.9%だったのが、22年には家族葬が55.7%、一般葬が25.9%と一般葬が半減した。 フランスでわず…
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「わたしのペンは鳥の翼」 アフガニスタンの女性作家たち著 古屋美登里訳
2021年8月、タリバンが首都カブールを制圧、国外へ逃れようとする人々で混乱を来すカブール国際空港の模様は記憶に新しい。タリバン政権による女性の就労や教育の権利制限は問題視されているが、それ以前から…
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「オスとは何で、メスとは何か?」諸橋憲一郎著
かつて野坂昭如が「男と女のあいだには深くて暗い河がある」と歌っていたが、生物の性研究の分野でも、最近までオスの対極にメスを置き、「対極に配置したオスとメスの間に深い境界を設けて、生物の雌雄を位置づけ…
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「蛇と梯子」セリーナ・トッド著 近藤康裕訳
「ゆりかごから墓場まで」は第2次世界大戦後の労働党政権による完全雇用の導入と福祉国家の拡大を示すスローガンだ。中等教育の無償化もそのひとつで、教育の平等を導入することで階級間の社会的流動性を促そうとい…
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「切り裂きジャックに殺されたのは誰か」ハリー・ルーベンホールド著 篠儀直子訳
イギリス史上最悪の犯罪とされる切り裂きジャック事件。この19世紀末に起きた連続殺害事件には「売春婦殺し」という文言が常に冠されてきた。 しかし、公式認定された5人の被害者のうち3人は売春婦だ…
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「大奥御用商人とその一族」畑尚子著
今年の大河は松本潤主演の「どうする家康」。家康を祖とする江戸幕府はその後260年余の長きにわたり続く。全15代の将軍の中でもっとも長く在職したのは第11代の家斉で、およそ50年の在位期間に50人の子…
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「製本屋と詩人」イジー・ヴォルケル著、大沼有子訳
20世紀のチェコの作家といえば、「ロボット」という言葉の生みの親で「山椒魚戦争」など痛烈な風刺作品で知られるカレル・チャペック、オーストリア支配下のチェコを舞台にした反戦風刺小説の傑作「兵士シュヴェ…
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「『死んだふり』で生きのびる」宮竹貴久著
英語で死んだふりはplaying possum。ポッサムは有袋類のオポッサムのことで、ネットでもその見事な「死んだふり」ぶりを見ることができる。ニワトリやカエルの死んだふりも有名で、生き物全般でも死…
