シネマの本棚
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「真珠のボタン」が意味する歴史の悲劇
何の予備知識もないまま映画館に入って、場内の明かりが消えたとたん、ふと予感にみちた胸の高鳴りを覚えることがある。 そんな忘れてひさしい歓喜をいま味わわせてくれるのが、現在都内で2本立て公開中…
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ドローン・オブ・ウォー
ちかごろ話題のドローン(無人航空機)。先々週封切られたアンドルー・ニコル監督の「ドローン・オブ・ウォー」はこのドローンが与える戦争の恐怖を描いた映画だ。 主人公はイーサン・ホーク演じる米空軍…
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インターネットの発想を先取りした老監督 ロバート・アルトマン
ハリウッド映画沈滞の70年代に気炎を吐いた2人の監督のドキュメンタリー映画が相次いで公開される。先週末封切りの「サム・ペキンパー 情熱と美学」、今週末が「ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ…
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故郷・陸前高田の変わり果てた風景「未来をなぞる 写真家・畠山直哉」
東日本大震災を記録したドキュメント類はたくさんあるが、震災経験が「美」とどう関わるのかを考えさせるものは多くない。その数少ない一例が、現在都内公開中の映画「未来をなぞる 写真家・畠山直哉」。 …
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北アイルランドの首都で英軍兵士のサバイバル劇「ベルファスト71」
いまの若者たちにはキョトンとされるだろうが、かつて「テロリスト」という言葉にどこかロマンチックな響きのある時代があった。 それが変化し始めたのが72年のミュンヘン五輪あたり。その後、一般市民…
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巨匠ヴィム・ヴェンダースの最新作「セバスチャン・サルガド」
貧困や搾取や紛争などで苦しむ人々は、えてして世間から目を背けられる存在としてあつかわれるものだ。ところがそんな人々の姿を、文字通り「目の離せない」存在として描き出す写真家が、現在都内公開中のドキュメ…
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親友ポランスキー監督も登場するF1レース映画「ウィークエンド・チャンピオン」
F1といっても一時の人気は跡形もないが、あれはバブル期の例外事象。本当のGPファンにしてみればF1の最盛期はもっと昔の70年代。伝説のジム・クラークは既に事故死していたが、フィッツィパルディ、ヒル、…
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遅咲きのジュリアン・ムーア 最新の話題作「アリスのままで」
遅咲きの役者は長持ちする。その典型がジュリアン・ムーアじゃないかと思う。なにしろ「ブギーナイツ」で注目されたのが37歳。初めから成熟した印象のおかげで50代半ばでも役柄が狭まらない。そんな彼女の最新…
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幻想の近未来ハリウッドが舞台のSF映画「コングレス未来学会議」
アニメの神髄は寓意にある。日本ではなぜかリアル重視のアニメ界だが、元来「動く絵」であるアニメは現実をなぞる(=写す)のではなく、現実のエッセンスを抽出し、いわば「たとえ話」なのである。 その…
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アメリカ南部の大学が舞台の“女子会映画”「ピッチ・パーフェクト」
日本で学園ものといえばもっぱら高校か中学だが、アメリカでは大学ものもいまなお盛ん。ただし傑作は少なく、大ヒット作も「アニマル・ハウス」あたりまでさかのぼるか「グッド・ウィル・ハンティング」のような変…
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磯崎新、安藤忠雄らのインタビューでつないだ建築ドキュメンタリー「だれも知らない建築のはなし」
近頃とんと耳にしないのが「ポストモダン」。バブルの代名詞みたいなのがあだになった感があるが、ほんとにバブルの共犯だったんだ、と思わせるのが今週末封切りの映画「だれも知らない建築のはなし」。 …
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インヒアレント・ヴァイス
将来を嘱望されながら消えた往年の美男美女に、銀幕で再会することがある。現在公開中の映画「インヒアレント・ヴァイス」のエリック・ロバーツもそれ。 80年代初頭、イケメン演技派として注目されなが…
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ブレークダンス、ラップ、DJと80年代若者文化の絵巻物
最近の報道によれば2060年にはアメリカで「少数派が多数派になる」見込みという。ヘンな言い草だが、要は白人以外のマイノリティー人口の合計が過半数になるわけだ。だが文化の面、特にポピュラー音楽などはと…