夏の甲子園V候補はなぜ早々と散ったのか...1年通じた過密日程 識者は「春季大会廃止」に言及
夏の甲子園は19日の準々決勝4試合で県岐阜商(岐阜)が春夏連覇を狙う横浜(神奈川)相手に勝利。番狂わせを演じてべスト4進出を決めた。
21日の準決勝はこの県岐阜商に加え、日大三(西東京)、山梨学院(山梨)、沖縄尚学(沖縄)の4チームで争われたが、今大会は優勝候補といわれた強豪校が早々と姿を消した。
今秋ドラフト上位候補の石垣元気(3年)を擁する昨春優勝校の健大高崎(群馬)は、昨夏優勝校の京都国際(京都)に、今春準優勝の智弁和歌山(和歌山)も花巻東(岩手)相手に初戦敗退。22年夏Vの仙台育英(宮城)は、沖縄尚学に3回戦で敗れた。
健大高崎の青柳博文監督は「万全な状態で臨むことができましたが、京都国際さんの野球が上回った結果です」と前置きした上で、「強いて言えば……」と、初戦までのインターバルの長さについて、こう言った。
「8月5日の開会式から13日に初戦を迎えるまで雨天順延もあって8日間空きました。相手も同じ条件ではありますが、実戦からも離れたことで、甲子園では特に投手陣が誰一人として群馬大会時のボールのキレがなかった。練習場は毎日、大会本部から割り当てられますが、時間は2時間と決まっている。練習場の確保、練習時間の確保が難しい面はありました」
調整に苦慮したといえば、出場した全49校の最後に初戦(2回戦)を迎えた神村学園(鹿児島)だ。夏は2年連続4強の実績があり、今年も多くの好投手を擁しながら、1回戦を突破してきた創成館(長崎)相手に、2安打完封負けを喫した。
高校野球関連の書籍を多数執筆する高校野球アナリストの田尻賢誉氏は、「個々の投手が投げ方を工夫することで、番狂わせを起こすケースが増えています」と、こう続ける。
「横浜、智弁和歌山はともに、相手先発の左の変化球投手を打ち崩すことができずに敗れました。昨夏も、優勝候補の大阪桐蔭(大阪)が小松大谷(石川)の右腕・西川大智(現桜美林大)相手にわずか92球で完封負けを喫した。西川は直球の最速が140キロに満たないものの、変化球の使い方に加え、打者のタイミングを外そうと、足の上げ方を変えたり、クイックで投げたりと、工夫を凝らしていた。
プロのように何度も同じ投手と対戦するならともかく、こうした投手を初見で打ち崩すことは容易ではありません。昨夏の西川の投球は、多くの投手がチェックし、参考にしているはずです。昨年から『2段モーション』が解禁されたことに加え、低反発バットの採用で長打が出づらくなったことも追い風になっています。『いくら強い相手でも、工夫ひとつで勝てるチャンスはある』という意識は、以前よりも高まっていると感じます」