インヒアレント・ヴァイス

公開日: 更新日:

 将来を嘱望されながら消えた往年の美男美女に、銀幕で再会することがある。現在公開中の映画「インヒアレント・ヴァイス」のエリック・ロバーツもそれ。

 80年代初頭、イケメン演技派として注目されながら演技オタク特有の自己破壊願望で汚れ役に挑戦するうちに脇役へ。

 それが今回は「行方不明になったナチスかぶれのユダヤ人の成り金」というワケワカラン役で結構いい味を出していたのだ。

 話の舞台は70年代初頭のロス。ホアキン・フェニックス扮する主人公は私立探偵だが、ノワール・ヒーローとは裏腹にモジャモジャ頭で、サンダル履きのマリフアナ大好き天然ヒッピー。

 謎の前衛作家トマス・ピンチョンの原作もヒッピー文化が曲がり角に差しかかったこの時期を知る70年代世代なら百倍楽しい小ネタ満載小説だが、敵役の警部補を演じるジョシュ・ブローリンが「ポイント・ブランク」のリー・マービンに密かなオマージュを捧げるなど映画はよりディープな味わいに徹し、それが逆に「70年代も遠くなりにけり」という感慨をもたらすのである。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 2

    萩生田光一氏「石破おろし」がトーンダウン…自民裏金事件めぐり、特捜部が政策秘書を略式起訴へ

  3. 3

    参政党は言行一致の政党だった!「多夫多妻」の提唱通り、党内は不倫やら略奪婚が花盛り

  4. 4

    【夏の甲子園】初戦で「勝つ高校」「負ける高校」完全予想…今夏は好カード目白押しの大混戦

  5. 5

    早場米シーズン到来、例年にない高値…では今年のコメ相場はどうなる?

  1. 6

    落合博満さんと初キャンプでまさかの相部屋、すこぶる憂鬱だった1カ月間の一部始終

  2. 7

    打者にとって藤浪晋太郎ほど嫌な投手はいない。本人はもちろん、ベンチがそう割り切れるか

  3. 8

    伊東市長「続投表明」で大炎上!そして学歴詐称疑惑は「カイロ大卒」の小池都知事にも“飛び火”

  4. 9

    “芸能界のドン”逝去で変わりゆく業界勢力図…取り巻きや御用マスコミが消えた後に現れるモノ

  5. 10

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も