シネマの本棚
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自慢のスニーカーを奪われた少年が報復に…
「フッドムービー」という映画ジャンルがある。フッドは「ネイバーフッド」、つまりご近所の意味で、ここでは黒人近隣地区を舞台にした映画を指す。昨今、見どころのある黒人映画はこのフッドムービーかコメディーに…
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「アジア系」が主役 迫真の心理サスペンス
この夏、アメリカでは「クレイジー・リッチ・エイジアンズ」という映画が予想外のヒットを記録した。シンガポールの名門一族の孫に求婚された中国系アメリカ人女性が彼の故郷を訪ね、移民で苦労した自分たちとは違…
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“ケンカ殺法”でまたもトランプを敵に回すM・ムーア
2年前の米大統領選の直前、ヒラリー勝利確実の予想の中でひとり「トランプが勝利する5つの理由」を説いた男がいた。マイケル・ムーア。ブッシュ政権を敵に回し、全米ライフル協会から目の敵にされたあのドキュメ…
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「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」
11月に予定される米連邦議会中間選挙は、トランプ政権下で保革逆転をめざす民主党に絶好の機会。わけてもニューヨーク州の下院選挙第14区では議員歴の長いベテランの男性を28歳のヒスパニック系新人女性候補…
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地味なオジサンの正体はCIA
中年以上の読者なら先刻ご承知のように「ミッション:インポッシブル」はもともとテレビの「スパイ大作戦」だった。「スター・トレック」も「宇宙大作戦」である。「バットマン」は「バットマン」……となると笑い…
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「運命は踊る」
あいにく本欄で紹介できなかったが、この夏、「ガザの美容室」というパレスチナの映画が公開された。パレスチナのガザ地区にある小さな美容室にやってきた女たちの、ほとんど会話から成る(しかし監督は双子の男兄…
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ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男
初めて握ったラケットは木製だった、というのは70年代の話である。ラケットには「ケン・ローズウォール」のサイン、といっても多くの若者は知らないだろう。当時は自分でガット張りからやらされたし、バックハン…
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テル ミー ライズ
私事で恐縮だが、夜中に家を抜け出してオールナイト映画館に通い始めたのが中学2年のときだった。補導の目をかいくぐる冒険で、そこで出合ったのが「マラー/サド」の通称で有名なピーター・ブルックの前衛演劇の…
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一服の清涼剤のようなハイブリッドアニメ
今年4月に亡くなった高畑勲監督の遺作「かぐや姫の物語」。ジブリアニメでは破格の画風が話題になったが、これをしのぐ異色のアニメが来週末封切りの「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」である。 …
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性の革命前のイギリスを舞台にした悲恋
小説の風趣は一にかかって文章にある。同じ筋立てが文章しだいでまったく違うものになるのである。 同じことが原作小説の映画化にもいえるだろう。映画化の失敗という話ではない。むしろ映画と原作の微妙…
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キューバ音楽の伝説的ドキュメンタリーの続編
いまとなってはずいぶん昔に感じる1999年、一本の音楽映画が世界中を魅了した。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」――鮮烈に思い出す人も多いだろう。ギタリストのライ・クーダーが「発見」したキューバの…
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元ベトナム駐留海兵隊員が30年ぶりに再会
アメリカのテレビ用映画が日本では劇場公開される。昔よくあったパターンだが、昨今はこれがネット配信映画に変わりつつある。だが、あなどるなかれ。この手の作品には低予算だからこその秀作が交ざっているもの。…
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差別に立ち向かったボールドウィンの孤独
思えばトランプ政権時代に限った話ではなかった、と改めて思わせられる映画がある。先月から都内公開中の映画「私はあなたのニグロではない」。米作家ジェームズ・ボールドウィンの、差別に立ち向かう孤独な闘いを…
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真剣勝負の醍醐味が味わえる劇場公開デビュー作
小説であれ映画であれ、新人の作品に接するのは普段以上に気合が入る。そんな真剣勝負のヒリヒリする醍醐味を味わえるのが劇場公開デビュー作で、都内公開中の映画「枝葉のこと」である。監督は二ノ宮隆太郎。主演…
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NY五番街の延伸計画を中止に追い込んだ市民運動家の人生
かつて暮らしたニューヨークは見るからに危険で汚い街だった。通称「ABC通り」の路上は割れた注射器だらけ。キャンディーストアの売り物も駄菓子でなくドラッグだった。しかし、今そこは人気のクラブやレストラ…
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主演男優が往年の力道山そっくり
韓国現代史上最大の暗部・光州事件の実話を人情喜劇にした「タクシー運転手」、大統領疑獄事件のたびに注目される大検察庁の風刺劇「ザ・キング」など話題作つづきの韓国映画。「ノワール」と称される暗黒映画も、…
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名作「私の20世紀」監督の30年ぶりの新作
かつて冷戦崩壊直前のハンガリーから登場していきなりカンヌ映画祭の新人賞をさらった映画があった。「私の20世紀」。光の寓話とでもいうべき魅惑的な映画なのだが、その後は監督のイルディコー・エニェディの名…
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終わるに終われない人生の暮れ方
75歳以上の後期高齢者がもうじき前期高齢者の人口を上回るという。日経新聞の見出しを借りると「重老齢社会」の到来である。いやはや驚いた新語だが、結局現代は老いを毛嫌いしているのだろうか。 現在…
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理想主義を捨てた国際社会への鋭い批判
シリア難民問題に端を発した一連の騒動でいまや権威ガタ落ちのEU。そんな時世を背景に、理想主義を捨てた国際社会への鋭い批判を秘めた娯楽映画と評判で話題なのが先週末封切りの「修道士は沈黙する」である。 …
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壊れかけの人形細工のようなブルジョワ一族
好きじゃないのに新作が来るとつい見てしまう監督。ミヒャエル・ハネケはそういう映画監督の筆頭格じゃないかと思う。国籍はオーストリアだが、独仏米を股にかけるカンヌ映画祭の常連。なのに「観客を不愉快にさせ…