シネマの本棚
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架空の雑誌の編集部が舞台のファンタジー映画
ニッポン人にはどういうわけか、ニューヨークを「コジャレた街」と思ってる向きが多い。ほんとかね。だってトランプを生んだ街ですよ? とはいえ、その手の思い入れはどの国にもある。たとえばアメリカ人…
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聴覚障害の一家の長女が歌の才能を見いだされ…
うまい映画はうまい食堂の飯に似ている。当たり前のメニューでも、ちゃんとした素材と下ごしらえで、手ぎわよく仕上げて「おっ」と思わせる。そんな映画に正月早々出合った。来週末封切りの「コーダ あいのうた」…
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伝説のコメディアンの短い生涯を辿るドキュメンタリー
以前、大学で教えたゼミ生に、お笑い芸人を目指し、今はテレビ局員の若者がいて、その動機を「家の中が荒れてた時にお笑い番組だけは皆で一緒に見てましたから」と語ってくれた。図らずもその話を思い出したのが、…
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常識破りの回転レシーブに脅威を感じたソ連
IOCの圧力と官邸の下心で強行された今夏の東京五輪。大赤字必至の「総括」は今月発表と聞くが、コロナ禍での不景気も含め何だかむなしい年の瀬にふさわしい(?)ドキュメンタリー映画が先週末から公開されてい…
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水俣病の人々への寄り添い方を示した記念碑的作品
ジョニー・デップが写真家ユージン・スミスを演じた映画「MINAMATA-ミナマタ」が封切られた際、都内ではかつて土本典昭監督が撮ったドキュメンタリー「水俣 患者さんとその世界」と「水俣一揆 一生を問…
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ダークファンタジー風味のピノキオ物語
昔話が現代の子ども向け物語にされるときに、大幅な書き直しや、残酷な描写が削られたりするのが多いのは割に知られた話だろう。 有名なグリム童話も、もとはグリム兄弟による民話採集の集成。19世紀初…
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少女の危機感と孤独が切々と伝わるドキュメンタリー
何事によらずコロナ禍の前のことは遠い過去に感じられてしまうが、あの「北欧の少女グレタ」はどうだろう。2年前の国連の気候変動会議で怒りの涙を浮かべ、「こんな世界なのに大人たちはまだ経済成長の話ばかり。…
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小野田寛郎元少尉の潜伏生活を描く長編劇映画
1974年といえば団塊ジュニア世代の最後の生まれ年だが、実は戦後ニッポンの象徴的な事件が起きた年でもある。敗戦から28年余にわたり、「徹底抗戦」を信じてフィリピンの密林に潜んだ小野田寛郎元少尉の帰国…
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大事故の謎に迫ったルーマニアのドキュメンタリー
大手マスコミが報じない事の真相を非主流派メディアが果敢に追及して暴く――。いえ、日刊ゲンダイの話じゃありません(笑い)。 ルーマニアの新聞「ガゼタ・スポルトゥリロル」(その名も「スポーツ新聞…
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選挙の惨状を風刺した傑作コメディー
世界中で政治の劣化が絶えない。どこかの国では首相が2代続けて“政権投げ出し”に走る始末だが、「デモクラシーの本家」を自任するアメリカだって「アフガン撤退失敗」の大報道の陰で、地方自治体の選挙法改悪を…
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ひとりよがりの男文化にお灸を据える艶笑喜劇
ノエル・カワードといっても今や知る人も少なかろう。大学の若手ブンガク教授連でも今どき愛読者を名乗るのは頭でっかちの俗物に決まってる――なんて冒頭から毒づいてしまったが、カワードは戦前のロンドンとニュ…
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50年前の伝説の音楽フェスのドキュメンタリー
五輪のから騒ぎが終わって戻ってきた長く暑い夏。「ロング・ホット・サマー」といえば現代史では1967年夏、アトランタとボストンから全米に飛び火した人種蜂起のことだ。さらには64年の公民権法から「ワッツ…
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中華街が舞台の家族史ドキュメンタリー
米中対立が激化の一途という報道に、ふと、むかし横浜っ子の先輩に聞いた中華街の話を思い出した。およそ300軒もの中華料理店の並ぶあの街は、かつて「大陸派」と「台湾派」に分かれて互いに反目していたという…
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冷戦期台湾の「白色テロ」の歴史を学園ホラーに
台湾といえば「親日的」が大方の日本人の先入見。しかし敗戦後間もない時期の日台関係は波乱含みで、渋谷警察と愚連隊がつるんで在日台湾人集団と争った「渋谷事件」など、国内でもけんのんな事例は珍しくなかった…
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画面にあふれる空気はまぎれもなく70年代
外国の友人に「東京ほど映画に恵まれてる街はないね」と言われたことがある。話題の娯楽大作はむろん、ヨーロッパ系や邦画専門の名画座、アート系のミニシアター、映画アーカイブまで、多様な映画を街中でやってる…
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孤島に来た若手灯台守が奴隷扱いされ…
サイコスリラーというジャンルはもはやホラー映画の域を超えたらしい。むしろ時代の無意識を託す一種の文学的ジャンルとでもいいますか。その好例が7月9日封切りの「ライトハウス」である。 北大西洋の…
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ダンサーらが繰り広げる不思議な時空
天才肌だが神経質な男が、年をとって円くなる。よくある話だが、円くなっても豊かになるとは限らない。その稀有な例外を見せてくれるのが先月末から公開中の「アメリカン・ユートピア」だ。 実はこの映画…
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男たちを手玉に取る小悪魔ぶりが今回も話題
演芸場や劇場は営業再開を許可したのに映画館は休業という東京都の方針に、映画界から強い不満の声が出ている。一方、単館系ミニシアターでは制限下で知恵を絞って「通」の目を引く企画が目立つ。 たとえ…
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四半世紀前の実写版をアニメにリメーク
ふつう、映画のリメークは同じ話を別のキャストや監督で製作したり、よその国で映画化したりすることをいうが、同じ物語を四半世紀も経って同じ監督が、しかも実写をアニメに変えてリメークする。これはかなり珍し…
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ニューヨークの古書店を活写するドキュメンタリー
コロナ禍でアマゾンに押されっ放しの小売業界だが、元はアマゾンもネット書店。海外書籍の入手しやすさで最初に大学教員らが飛びついた。おかげで昔ながらの洋書店が干上がり、独自の選書眼で鳴らした東京堂書店の…