大事故の謎に迫ったルーマニアのドキュメンタリー

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「コレクティブ 国家の嘘」

 大手マスコミが報じない事の真相を非主流派メディアが果敢に追及して暴く――。いえ、日刊ゲンダイの話じゃありません(笑い)。

 ルーマニアの新聞「ガゼタ・スポルトゥリロル」(その名も「スポーツ新聞」)が現地で起きた大事故の裏面を追及。その一部始終を描くドキュメンタリーが今週末公開の映画「コレクティブ」だ。

 事の起こりは6年前、首都ブカレストの若者に人気のクラブで27人の死者を出す大火災が勃発。ところが入院中の生存者からも死者が続出、被害は倍以上に膨れ上がる。この謎に疑問を持ったのが先のスポーツ紙のトロンタン編集長。死因が感染症という事実から密かに取材を始め、医療体制の拙劣さを突き止める。波紋は製薬会社からその許認可を担当する保健省に及び、病院や企業や官庁までが一体化したずさんな構図が明るみに出るのである。

 正義一徹のトロンタン記者と編集部もさりながら、社会事業家から抜擢されたヴォイクレスク新保健相とそのスタッフに迫るくだりが迫真。解決策を真摯に模索しながらも政治圧力を受け、内部告発者も腰を引いてしまう。元は店名だった「コレクティブ」(共同の)が、医療から行政全体に深く根を下ろす腐敗の「共同謀議」へと、みるみる違う意味を帯びてくるのだ。

 剛直な「調査報道」そのものの映画に対応する本を探して、今回はどうにも困った。したり顔の政局話に流れず正義と公正を重んじる硬派の政治報道は今や絶滅危惧種らしいのだ。その点、筋金入りの社会部記者は一味違う。清武英利著「サラリーマン球団社長」(文藝春秋 1760円)は、読売新聞社会部記者から巨人軍球団社長に転身しながら「ドン」に逆らった「清武の乱」の当事者の作。低次元の私情抜きに、日本型組織の「集団的圧力」に逆らった男たちを描く筆が冴える。 <生井英考>

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