常識破りの回転レシーブに脅威を感じたソ連

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「東洋の魔女」

 IOCの圧力と官邸の下心で強行された今夏の東京五輪。大赤字必至の「総括」は今月発表と聞くが、コロナ禍での不景気も含め何だかむなしい年の瀬にふさわしい(?)ドキュメンタリー映画が先週末から公開されている。その名も「東洋の魔女」だ。

 この言葉、1964年の東京五輪を覚えている世代にはおなじみだろう。「俺についてこい!」の大松監督に率いられたニチボー貝塚ほか女子バレーの日本代表選手たちを指すこの異名は、ソ連の新聞が最初に名づけたのだそうだ。

 当時、ソ連は世界一のバレー強国。これに挑んで撃破したのが、戦後20年、身を粉にして復興と高度成長に貢献したニッポンの女性たちだったわけだ。常識破りの回転レシーブを脅威とみた異名だが、「なでしこ」なんてオタメゴカシのニックネームより爽快な脅威の代名詞と感じるのは筆者だけだろうか。

 監督は団塊ジュニア世代のフランス人ジュリアン・ファロ。仏国立スポーツ体育研究所の映像管理部門に勤務し、多数の記録映像の中から60年代日本に注目したらしい。

 面白いのはその驚きを表現するために、当時の映像や現存する元選手へのインタビューのほかアニメの「アタック№1」のシーンを織り交ぜていること。監督自身、子ども時代にこのアニメを見た記憶が重なったというから因果はめぐるとはこのことだろう。

 とはいえ、あのころのスポ根精神を面白おかしく懐旧する気は起こらない。むしろシゴキに耐えて刻苦勉励するかつて選手たちの横顔が、敗北必至のインパール作戦に擬せられた今夏の五輪騒動にダブって見えて仕方なかった。防衛大学校の教官が「先の大戦」の愚かさを解明した関口高史著「戦争という選択 〈主戦論者たち〉から見た太平洋戦争開戦経緯」(作品社 2970円)がしきりに脳裏をよぎったゆえんである。 <生井英考>

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