シネマの本棚
-

対中の理髪店を舞台に描く小さな冒険の物語
とぎれることなく続く、静かな台湾ブーム。来月下旬に公開予定の「本日公休」は台湾映画好きにはむろん、これまでなじみのない人にもわかりやすい入門編になる一作だろう。 台湾第2の都市・台中の町はず…
-

美談抜きで商業映画の水準にあるお気楽自主映画
暑い。なんといっても暑い。何も考えずアタマをからっぽにできる暑気払いはないものか、と心が動く。 今週末封切りの「侍タイムスリッパー」は題名からしてお気楽映画の気配十分だ。 幕末、長州…
-

村上春樹の複数の短編を“リミックス”した仏アニメ
同じ街を写しているはずなのに、外国人の撮った写真や映画の東京が、まるで異世界のように見えて驚かされることがある。 先週末から公開中の「めくらやなぎと眠る女」は、そんな“異次元の東京”を背景に…
-

伝説のドキュメンタリーに映る平和だった世界
7月に入ったとたん、うだるような暑さ。そこに折よくリバイバル公開されたのが「エンドレス・サマー デジタルリマスター版」だ。1966年、20歳そこそこの若者ふたりが理想のサーフィンスポットを探して世界…
-

軍規違反覚悟で救助を選んだ艦長の苦悩
かつて戦には名誉が不可欠だった。ウクライナやガザを思うと信じがたいが、それもまた人類史の一部だ。 今週末封切りの「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」。イタリアとベルギーの合作による戦記映画で…
-

強欲な家主と出会い清貧な父に苛立つように
1990年代をつい昨日のように感じるのは年をとった証拠だろうか。思えばもう30年も昔なのだ。スマホもSNSもなく、冷戦終結後の狂騒も希望に彩られたあのころ。フェイクニュースが憂鬱な昨今とは大違いの、…
-

上官の覚えめでたい新兵に罠を仕掛け破滅に
軍隊はいうまでもなく武力集団だが、それ以上に儀礼的な集団でもある。 厳密な階級制と命令系統。延々と繰り返される「気をつけ」と「休め」。考えるより先に動く体。礼装となれば兵卒でさえ胸に軍歴章を…
-

パリ郊外の移民団地をめぐる行政と住民の闘い
四半世紀近く前、スウェーデンで移民排斥の調査をしたことがある。ある自治体が移民排斥の条例を決議したのを政府が強引に止めに入ったのだ。表面的な観光イメージとは裏腹に重工業が盛んなスウェーデンは、早くか…
-

数々の映画が「男目線」であることを明らかに
ちかごろ耳にすることの多い新語に「構造的差別」というのがある。「構造的人種差別」は慣習化された社会制度の中で一筋縄では解決できなくなっている人種差別のこと。同じように「構造的性差別」もある。これを娯…
-

記者らが伝えるニュースの裏側にある生きた現実
戦争特派員というけれど、その多くはストリンガーと呼ばれる契約の取材記者だ。危険な前線取材の大半は、そういう人々が現場を担っている。 彼らの取材はごく一部のみがニュースに使われる。映像も断片の…
-

推しの実刑に心壊された同志女子たちの声を求めて
オタクという言葉が出てきたのは40年も昔だが、当初の陰気な影は既にない。いまでは多数の亜種も登場、そのひとつが「推し活」だ。この奇妙な関係をめぐる韓国のドキュメンタリーが現在公開中の「成功したオタク…
-

美術館からサックラー展示室を排除する戦術は…
てっきりアーティストの仕事や人間を描く芸術ドキュメンタリーだと思っていたら全然違った、というのが今回の映画。今週末封切りの「美と殺戮のすべて」である。 取材対象はアメリカの写真家ナン・ゴール…
-

夢幻的な砂漠の映像を心理描写に生かした続編
シリーズものの映画には2種類がある。ひとつは、主役などは同じだが毎回の筋は独立した「1話完結型」。代表が007だ。もうひとつは連続したストーリーでキャラクターの運命が変転する「大河小説型」。こちらは…
-

リトル・リチャードの先駆的人生を描いたドキュメンタリー
ロックンロールの創始者とされる3人の中で演奏がいちばん巧みなのはファッツ・ドミノだが、ステージパフォーマーとしては群を抜いてリトル・リチャードだろう。 今週末封切りの「リトル・リチャード:ア…
-

スペインの巨匠、ビクトル・エリセの31年ぶりの新作
映画は20世紀で終わったという説がある。映画用フィルムの登場が19世紀末。それから1世紀後にデジタル化でフィルムが淘汰され、いまでは大半の映画館がDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)に置き換わって…
-

ベルギー出身監督の最新2作が同時公開
夜になると都会では大きな人工音が絶える。すると静寂に遠い地鳴りのような人工音が混じり合って、都会のほかにはない、神経の研ぎ澄まされた独特の空間になる。 ふだんは意識しないそんな〈夜の神経〉を…
-

社会事情を反映し風刺を効かせて描くコメディー
コメディーは国境を超えない。笑いは万国共通というけれど、それはお子さまレベルの話。大人の笑いは風刺も皮肉も社会事情と切り離せない。 今週末封切りの「僕らの世界が交わるまで」はその実例だろう。…
-

ヒジャブ姿の女性通信士に戦争のリアルを見る
正規軍同士が正面からぶつかり合うウクライナの戦争に目を奪われる昨今だが、むろん対テロ戦争も終わってはいない。特に中東のイエメンではサウジが支援する政府軍とイランが支える反政府勢力フーシ派の内戦が長期…
-

アウシュビッツで「死の天使」に仕えた91歳の証言
インタビューに答える人物の上半身を固定カメラで撮り続ける。ニュース映像などでよく見るショットだが、ドキュメンタリーの分野では「おしゃべり頭(トーキングヘッド)インタビュー」などと呼ばれ、退屈な映像の…
-

不安を抱えた人物ナポレオンを描いた“評伝”映画
歴史上の人物を生涯のまま描くのが「伝記」、特定の横顔に焦点を当てたり、なんらかの評価を加えて人物像を描くのを「評伝」という。 そのひそみにならえばこれは“評伝映画”だろうか。今週末に封切り予…
