江戸おんな職人余録 第六弾 「福猫屋おきん」
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(24)なんだって、できる
あれやこれやと試して、作り直して、夏が終わる頃には新しい招き猫たちが浅草の各所で売られ始めた。それらはすぐに評判となり、おかみさんはほくほく顔である。 「おきん、やっぱりあんたは商いを学んだほ…
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(23)あたしもまだまだですねえ
「それで結局、新岡屋のお嬢さんはどうするつもりなんだい」 おかみさんが、むぎ湯と一緒に水饅頭を出してくれた。善爺に見つかるとうるさいからと、お勝手でこっそり、二人だけのお八つである。 「…
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(22)懐いてしまって可愛くて
翌日、おきんは新岡屋に出向き、おふささんを誘って猿江に向かった。浅草から土手沿いを南に歩いて新大橋を渡ると、深川に向かう人の流れと木場の方へと行く人の流れがある。菊川を過ぎて竪川を越えると、新田の広…
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(21)どこかで見たことがある気が
今戸焼の招き猫は、一つ一つ表情が違うところに人気がある。色の塗りむらや多少のはみ出しも、表情同様にそれぞれの面白さ、愛嬌である。 おつねの手が遅いのは少々いらいらもするが、仕上がりの愛嬌にお…
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(20)拾った拾った、って、なんだよ
そう、拾ったのだ。おつねという女を。 いや、拾おうと決めた時にはまだ、おつねに会ったこともなかった。それでも迷いはなかった。 子は捨てたり拾われたり、自分の命の行く末を他人に決められ…
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(19)儲けの半分を渡す代わりに
女の名は、つね、と言った。 郷は上州で、二年前に亭主と共に江戸に出て来た。飢饉で米が採れず、郷にいたのでは飢えるばかりだと、故郷を見切ってやって来たのである。亭主は材木問屋に雇われて、筏で丸…
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(18)ぶつぶつが残るくらいがいい
枝豆売りの女は翌日もやって来た。 なるほど年若い。おきんと同じくらいだろうか。けれど疲れた顔をしていた。髪も結い直していないのだろう、ほつれがひどい。背負っている子は、赤子というよりは少し大…
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(17)あたしもずんだが食べたい
「赤子がいたんじゃ、後妻は無理だろ」 善爺が言った。 「子持ちの花魁なんてもんは聞いたことがねぇ、子持ちでも店には出られるだろうが、身請けして貰えるような花魁になんかなれやしねぇよ」 …
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(16)女の苦しみも知らないで
けれど、おかみさんが本気で招き猫が化けることをおそれていることは、なんとなくわかった。 今戸焼の猫の置物に魂が宿ることはあり得ないと思う。けれど人形の場合と同様、人が何か錯覚する、ということ…
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(15)招き猫にだって魂が宿る
豆を食べ終えた莢や枝葉は、そのまま乾かして焚き付けに使う。 無造作に庭の隅に捨て置かれた莢を眺めているうちに、おきんはあることを思いついた。ちょっとした商いになりそうだ。 いちばんあ…
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(14)枝豆売りは年寄りの商い
江戸の夏は賑やかだ。 大川の川開きの花火から始まって、人々はそれぞれに、暑さをしのぐ楽しみを見つける。 町には物売りの声が響く。人気なのは水売り。どこかの井戸で汲んだ冷たい水をかつい…
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(13)首巻きの小紋が洒落ている
おきんはうなずいて言った。 「慕っていた姉様の代わりに大事にしていた猫だそうですから、あのお嬢様がおたまを恋しがる気持ちはよくわかります。でも……あのお嬢様だって、もう七、八年したらお嫁にいっ…
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(12)おたまが幸せなら
「懸念?」 おきんが聞き返すと、おかみさんは苦笑いした。 「人ってのは欲張りだからね。そのおたまって猫を拾って、うちで可愛がってる人がさ、ふくさがし、の噂を耳にして、あれその招き猫は、う…
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(11)招き猫にちょっと仕掛けを
「おゆきちゃんが探しているおたまの柄なんです。今まで描いたことのない模様なんで、やってみたらちょっと面白い招き猫になりました」 「柄も面白いけど、この首巻きが洒落てるね! なんだいこの細かい模様…
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(10)あらま、縞三毛かい
「そうしてやれば、いっときはおゆきちゃんの気も晴れるとは思うんですけどね」 おきんは首を横に振った。 「それでおたまが戻らなかったら、期待していただけにがっかりするだろうな、と思って。福…
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(9)首巻きにとうがらしの小紋
一度話し始めると、女の子はおきんの訊いたことになんでも答えてくれた。 女の子の名前はおゆきちゃん、今年で八つ。日本橋の茶問屋のお嬢様で、上に兄が二人、姉が二人いると言う。上の姉とは十八も歳が…
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(8)いつの間にかそんな噂が
おきんは特に急かしたりはせず、女の子が自分から事情を話してくれるまでほっておくことにして、窯に火を入れた。 三度の食事の支度は女中の仕事だったが、飯炊きだけはおきんが毎朝やっている。 …
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(7)どうしたの?何かご用?
それは不思議でもなんでもない、ごく当たり前のことなのだ。だから、福猫屋の招き猫を飾ると、ちょっといいことが起こる。それは招き猫が福を招いているのではなく、招き猫を買った客自身が、自分で福を呼び寄せて…
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(6)鍋島の化け猫は忠義の猫
おかみさんは不思議な人だった。 福猫屋はもともと、おかみさんの実家。ご亭主の丑松さんは養子らしい。善爺によれば、おかみさんは子供の頃から土をこね、焼き物を作っていたという。 「あれでな…
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(5)猫という生きものは面白い
猫の気持ちなんて、わかるわけがない。 これまでに猫を飼っていたことはないし、特に猫が好きというわけでもなかった。でも仕事にするのだから、猫を知らねば始まらない。 福猫屋には三匹の飼い…
