(9)老化や視力障害は「夢」を変える? 夢が教えてくれる「脳の映像工場」の仕組み
例えば、暗い場所で人の顔のようなものが見えたり、遠くの物体を一瞬人影と見間違えたりするのも、脳が不足した情報を過去の経験から補っているためだ。夢は、この予測や補完の仕組みが、外界から切り離された状態で自由に働いている姿とも考えられる。
■脳は“受け身の器官”ではない
一方で、視力低下がすべて夢を変化させるわけではない。
生まれつき視覚を失っている人では、夢の中で音、触覚、におい、身体感覚が中心になることが知られている。しかし、成人してから視力を失った人では、何十年たっても、見えていた頃の風景が夢に現れることがある。これは、脳が一度獲得した視覚記憶を長期間保存していることを示している。
では、白内障や老眼ではどうだろうか。
老眼は、目のピントを合わせる能力が低下する状態であり、眼鏡などで補正できる。そのため、老眼だけで夢の内容が変化するという証拠は現在のところない。
一方、加齢黄斑変性や重度の緑内障のように、脳へ届く視覚情報そのものが大きく減少する病気では、シャルル・ボネ症候群のような幻視が起こりやすくなる。視覚入力の変化が、脳の映像生成システムに影響するためだ。


















