(8)なぜ、年を取ると昔の夢を見ることが増えるのか
「最近、子どもの頃に住んでいた家が夢によく出てくる」「近頃、大昔の友人が夢に出てくる」……。年齢を重ねた人から、こうした話を聞く機会は少なくない。
若い頃の夢には、仕事や学校、最近経験した出来事が登場しやすい。一方、高齢になると、故郷の風景、昔の友人、若い頃の自分など、何十年も前の記憶が夢に現れることが増えるように感じられる。これは単なる「昔を懐かしむ気持ち」だけでは説明できない。そこには、年齢とともに変化する脳の記憶システムが関係している可能性がある。
前回紹介したように、夢は「脳が記憶を整理する過程で生じる現象」と考えられている。日中に経験した出来事は、睡眠中に再び活性化され、必要な情報として保存される。その際、過去の記憶と新しい経験が組み合わされ、夢という形で現れることがある。
しかし、加齢によって脳の記憶機能には変化が起こる。特に影響を受けやすいのが、脳の奥深くにある「海馬」だ。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「海馬は、新しい出来事を記憶として定着させる重要な役割を担っています。ところが、年齢を重ねると海馬の神経細胞や神経回路の働きは徐々に低下し、新しい経験を長期記憶に変換する力が弱くなります。一方で、幼少期や青年期に経験した出来事など、長い年月をかけて形成された記憶は比較的保たれます。これは、古い記憶が海馬だけでなく、大脳皮質の広い範囲に整理されて保存されているためです」


















