「その犬をください」逢坂冬馬著│明治から令和までの人間と犬の姿を描く連作集
「その犬をください」逢坂冬馬著
開成学校の教師に着任した英国人ジョージは、自宅の横浜居留地でブルドッグ2匹を飼うほどの愛犬家だが、日本では行く先々で野良犬たちに吠えられ困惑する日々だ。ジョージは日本の犬は日本という国そのものだと内心で思いつつ、狂犬病の根絶の必要性を周囲に説き、授業ではボーダーコリーに羊を管理させ、犬が有用であることを生徒たちに教えていく。
そんなある日、ジョージは浪人に命を狙われ、すんでのところで通訳で士族の青年・藤川に助けられた。野良犬たちが吠えたので異変に気づいたのだと言う。それから2年。狂犬病予防という大義名分のもと、野良犬の駆除が始まった。ジョージは慌てて動物愛護の精神を語るが、生徒に「諸々の危険性の排除は文明化の象徴」と言われ、返す言葉がない。(第1話「未開の咆哮」)
これまで近代ヨーロッパの戦争などの作品を描いてきた著者による最新刊は、明治初期から令和までの人間と犬の姿を描いた4話の連作集。
昭和初期、渋谷に現れた老犬をめぐって人々が「忠犬」の姿に熱狂していく第2話「忠犬誕生」、犬の供出を強要される第3話「犬たちの戦争」など、近代化を背景に犬に対する人間の身勝手さも浮かび上がる。犬たちのけなげさも描かれるだけに、人間と犬とが共に幸せな世界であることを祈らずにはいられない。 (KADOKAWA 2145円)



















