「買わない生活」稲垣えみ子著│「買わない生活」の先にあったもの
「買わない生活」稲垣えみ子著
福島原発事故を機に10年前、大手新聞社を早期退職して以来、定期収入がなくても「快適で安心な暮らし」を実践している著者。部屋は収納ゼロ、冷蔵庫も洗濯機も持たない生活なのに、問題なく暮らせているのは、「町全体がわが家」という発想にあるという。本は所有せずとも古本屋が「うちの本棚」、近所のカフェは「わが書斎」。町がわが家ならご近所さんは「家族」だと。となると、家族には感じ良くしないといけない。著者が誰にでも挨拶をし、“いい人”になっていくと、思わぬオマケがついてきた。それが「もらう生活」だ。
冷蔵庫がない著者は、頂き物をずっと持ち続けてはいられない。そこで、好みを考慮しつつ顔見知りにおすそ分け。するといつしか逆流するようになったのだという。個人商店ではオマケ、銭湯で会う常連さんからは手作りのおかず……。資本主義とはまったく違う地下経済が生活に根付き始めたのだ。
節約でも我慢でもない「買わない生活」の極意と、その先にあった「もらう生活」をつづったエッセー。お金にまつわる不安が多い昨今、考え方と行動で生活が変わったリアルな報告は興味深い。暮らしとは人間関係であり、自分が幸せに生きるのに必要なお金は案外ほんのちょっと、という言葉が心に残る。 (東洋経済新報社 1980円)



















