「買わない生活」稲垣えみ子著│「買わない生活」の先にあったもの

公開日: 更新日:

「買わない生活」稲垣えみ子著

 福島原発事故を機に10年前、大手新聞社を早期退職して以来、定期収入がなくても「快適で安心な暮らし」を実践している著者。部屋は収納ゼロ、冷蔵庫も洗濯機も持たない生活なのに、問題なく暮らせているのは、「町全体がわが家」という発想にあるという。本は所有せずとも古本屋が「うちの本棚」、近所のカフェは「わが書斎」。町がわが家ならご近所さんは「家族」だと。となると、家族には感じ良くしないといけない。著者が誰にでも挨拶をし、“いい人”になっていくと、思わぬオマケがついてきた。それが「もらう生活」だ。

 冷蔵庫がない著者は、頂き物をずっと持ち続けてはいられない。そこで、好みを考慮しつつ顔見知りにおすそ分け。するといつしか逆流するようになったのだという。個人商店ではオマケ、銭湯で会う常連さんからは手作りのおかず……。資本主義とはまったく違う地下経済が生活に根付き始めたのだ。

 節約でも我慢でもない「買わない生活」の極意と、その先にあった「もらう生活」をつづったエッセー。お金にまつわる不安が多い昨今、考え方と行動で生活が変わったリアルな報告は興味深い。暮らしとは人間関係であり、自分が幸せに生きるのに必要なお金は案外ほんのちょっと、という言葉が心に残る。 (東洋経済新報社 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日向坂46「ひなたフェス」中止でもファンは宮崎へ「43億円」を動かした“推し活地方創生”の底力

  2. 2

    令和版『八つ墓村』にはこれまでにない「2つの見どころ」あり Jホラーの名匠と新・金田一耕助が魅せる

  3. 3

    「橋上代行昇格は絶対ない」 巨人来季監督に浮上する松井秀喜氏、高橋由伸氏に次ぐ「第3の男」

  4. 4

    青学大の4年間は「ひたすら駅伝を目指す」だけじゃない 今夏は初の海外合宿に踏み切った

  5. 5

    巨人・阿部前監督が球団復帰へ着々 「辞任4カ月での出戻り」は毒になるか、薬になるか

  1. 6

    佐々木朗希の最悪すぎる“退団劇”…ロッテから優秀スタッフ3人を引き抜き、大顰蹙を買っていた

  2. 7

    元関脇嘉風・中村親方〈1〉なぜ「朝稽古をしない」のか? 角界の常識から“あえて外れる”部屋づくり

  3. 8

    桑田真澄氏の発言が波紋 巨人の内部事情暴露のやけっぱち…来季監督の芽は完全消滅か

  4. 9

    六代目との抗争終結で勝ちどきをあげているのは絆會

  5. 10

    コメ農家廃業ラッシュ&米国産ジャガイモ輸入解禁に生産者猛反発! 農水省にはブーイングの嵐