本の森
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「とうがらしの世界」松島憲一著
ここ数年は第4次激辛ブームといわれている。第1次は1984年に発売された「カラムーチョ」に端を発し、86年の新語・流行語大賞の新語部門で「激辛」が銀賞を受賞した。以後、それぞれのブームの特徴はあるが…
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「『バカ』の研究」ジャン=フランソワ・マルミオン編 田中裕子訳
最近流行の行動経済学は、旧来の人間は基本的に合理的な生き物であるという〈ホモ・エコノミクス〉理論に代わって、「人間は必ずしも最大の利益を求めるわけでも、常に合理的な行動をするわけではない」ことに注目…
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「歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語」イヴァン・ジャブロンカ著 真野倫平訳
2011年1月、フランス南部のナント近郊に住む18歳のレティシア・ペレが誘拐・殺害され、数週間後、遺体はバラバラの状態で発見された。レティシアは幼い頃から家庭環境に恵まれず、双子の姉ジェシカと共に養…
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「見えない絶景 深海底巨大地形」藤岡換太郎著
昨年5月、人類が到達した最深点の記録が更新された。アメリカの海底探検家がそれまでより12メートル深い1万928メートル地点の潜行に成功したのだ。地上の最高峰エベレストがすっぽり入る計算だ。この地球最…
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「あいまいな会話はなぜ成立するのか」時本真吾著
夕食後の夫婦の会話。 妻「コーヒー飲む?」 夫「明日ね、出張で朝が早いんだ」 妻はコーヒーを飲むか否かを尋ねているのに、夫は飲む(イエス)とも飲まない(ノー)とも言っていない。それで…
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「病魔という悪の物語 チフスのメアリー」金森修著
緊急事態宣言が解除されてから2カ月余。再び新型コロナウイルスの全国的な感染拡大が懸念され、併せて無症候性キャリアーの増大が問題になっている。サイレントキャリアーが多くなれば、社会全体が疑心暗鬼に陥ら…
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「ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険」コーリー・スタンパー著 鴻巣友季子ほか訳
三浦しをんの「舟を編む」は辞書編纂に携わる人たちのちょっと奇矯な生態を描いているが、アメリカで最も歴史のある辞書出版社メリアム・ウェブスターの辞書編纂者であった本書の著者の「英語オタク」ぶりもなかな…
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「ステレオタイプの科学」クロード・スティール著 藤原朝子訳
今年5月、米国ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人男性の首を圧迫して死亡させた。この背景には、「黒人だから――」というステレオタイプ思考があったことは確かだろう。相手の言い分を聞かずに一方的な思い…
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「人体は流転する」ギャヴィン・フランシス著 鎌田彷月訳 原井宏明監修
著者はスコットランドのエディンバラに診療所を構えて全科を診る総合診療医。診療所を訪れるさまざまな患者を長年診てきた著者はいう。「生きていることは、終わりのない身体変容のただなかにいることだ」と。受精…
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「ゲット・バック・ネイキッド」藤本国彦著
1970年の6月、ビートルズの最後のアルバム「レット・イット・ビー」が写真集付きのボックスセットとして発売され、高校生の身としては高価ではあったが思い切って購入。同じ年の夏には同名の映画も公開され勇…
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「エゴ・ドキュメントの歴史学」長谷川貴彦編
「エゴ・ドキュメント」とは一人称で書かれた資料を示す歴史用語で、手紙、日記、旅行記、回想録、自叙伝といった形態の史料が対象となる。公的な記録からではなく、語り手の視点から外側の世界を見ることでこれまで…
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「カラスは飼えるか」松原始著
「カラスは飼えるか」という問いは、①法律的にカラスを飼うことは許されるのか②実際に自分の家で飼うことが可能か、の2つがあるが、答えは「基本、飼えない」である。 日本では野鳥は基本的に飼ってはい…
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「博士の愛したジミな昆虫」金子修治・鈴木紀之・安田弘法編著
東京都が休業要請のステップ2に移行するに当たり「ウィズ・コロナ」宣言を発した。この言葉については賛否あるが、要はコロナとの「共生」を図ろうということだろう。現実の生物界においては、絶妙ともいえる工夫…
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「鍋かむり日親」理崎啓著
戦後の文学・芸術運動においてユニークな評論活動を続けた花田清輝の生前最後の本は「日本のルネッサンス人」である。西洋のルネサンス論を論じた「復興期の精神」でデビューした花田が日本のルネサンス論で幕を閉…
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「ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿」佐藤満彦著
新型コロナウイルスの感染拡大を受けてカミュの小説「ペスト」が異例の売り上げを示しているという。古来、ペストは断続的にヨーロッパを襲っている。14世紀のパンデミックでは人口の3分の1がペストによって失…
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「義理と人情の経済学」山村英司著
立ち食いそばチェーンの「名代富士そば」は従業員の貢献以上の給料を支払い、アルバイトにもボーナスを支給するという。そんなことをすれば人件費が高騰して経営を圧迫するというのが経済学の常識だ。ところが実際…
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「毒薬の手帖」デボラ・ブラム著 五十嵐加奈子訳
「突如として白いマスクだらけになった通り……劇場や酒場、ダンスホールなど、人が多く集まる場所へは行かないように注意を呼びかけられた。劇場ではすべての窓を開け放っておかなければならず、閉めてあるのが警察…
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「夢の正体」アリス・ロブ著 川添節子訳
レオナルド・ディカプリオ主演の映画「インセプション」は、他人の夢の中に侵入して記憶を盗む企業スパイたちを描いたものだ。他人の夢をコントロールするのはまだSFの次元だが、自分の夢ならコントロールできる…
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「女であるだけで」ソル・ケー・モオ著 吉田栄人訳
ラテンアメリカ文学といえば、ガルシア・マルケス、バルガス・リョサ、オクタビオ・パスといった名前が浮かぶが、いずれもスペイン語を母語とし、作品もスペイン語で書かれている。本書は、〈新しいマヤの文学〉と…
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「ワンダーウーマンの秘密の歴史」ジル・ルポール著、鷲谷花訳
ワンダーウーマンはスーパーマン、バットマンと並ぶDCコミックスのスーパーヒーロー。2017年に公開された映画「ワンダーウーマン」は全世界興行収入8億ドルを超える大ヒットとなるなど、いまだ根強い人気を…