本の森
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「スターリン」オレーク・V・フレヴニューク著 石井規衛訳
本書の副題は「独裁者の新たなる伝記」。チャプリンは「独裁者」で風船の地球儀と戯れる独裁者=ヒトラーの姿を辛辣に描いたが、もしスターリンを主人公にしたらどのような場面を描いたのだろうか。 ヒト…
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「鷹将軍と鶴の味噌汁」菅豊著
エジプトのナイル川を南下していくと川沿いに円筒形の細長い塔があちこちにあるのが目に付く。これは食用の鳩を飼育するためのもので、レストランでも鳩料理がよく供される。フランス料理でもジビエとして鳩や鴨、…
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「耳のなかの魚」デイヴィッド・ベロス著 松田憲次郎訳
ジョルジュ・ペレックは実験的な作品で知られるフランスの小説家だが、「煙滅」という作品はフランス語で最も使用頻度の高いeの文字を一切用いずに書かれたもの。eなしに小説を書くのはいかに困難か想像に難くな…
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「食べものから学ぶ世界史」平賀緑著
先頃、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が産業革命前と比べた世界の気温上昇が、これまでの予測より10年早く2021~40年に1・5度に達すると予測、人間活動の温暖化への影響は「疑う余地が…
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「数の発明」ケイレブ・エヴェレット著 屋代通子訳
認知症のテストに、自分の年齢を言ったり、100から順に7を引いていくものがあるが、このテストには「数」という概念が既知であるとの前提が必要だ。しかし、著者が幼少期を過ごしたアマゾンには数を持たない先…
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「チャイニーズ・タイプライター」トーマス・S・マラニー著 比護遥訳
今回の東京オリンピックの開会式では、国・地域名の50音順で入場行進が行われた。前回の1964年のオリンピックではアルファベット順だったが、本書の序には2008年の北京オリンピックでは前代未聞の漢字の…
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「彼らはどこにいるのか」キース・クーパー著 斉藤隆央訳
つい先日の朝日新聞夕刊の第1面に「UFO遭遇 もしかしたら」という大見出しが躍っていた。この6月に米政府が「未確認飛行物体」の報告書を公開した。それによると、米軍パイロットが目撃した未確認の飛行物体…
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「コティングリー妖精事件」井村君江、浜野志保編著
1917年、イギリスはヨークシャー州コティングリー村に住むエルシー(16)と従妹(いとこ)のフランシス(9)は、雑誌に載っていた妖精の絵などを切り抜きヘアピンにつけキノコに刺し、近所の河原で自分たち…
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「中世ヨーロッパ」ウィンストン・ブラック著 大貫俊夫監訳
コロナ禍のイギリス各地でペスト医師が出現し、住民たちを不安に陥れているという。しかしこれはうわさの域を出ず、デマの可能性が高そうだ。ペスト医師とはペスト専門の医師で、鳥のようなクチバシ型マスク(中に…
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「言いなりにならない江戸の百姓たち」渡辺尚志著
江戸時代の百姓というと、「無学で読み書きができなかった。村は閉鎖的な社会で、村人は村外のよそ者とは付き合わなかった。武士に対しては服従するだけの無力な存在だった。江戸時代の農業は自給自足的だった」と…
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「私がフェミニズムを知らなかった頃」小林エリコ著
「私は世の中が男女平等だと1ミリも疑っていなかった。しかし、それは全て間違いであり、それに気がつくのに私はとても時間がかかった。男女が平等でないと教えてくれたのはフェミニズムだった。……男女は平等でな…
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「家は生態系」ロブ・ダン著 今西康子訳
人の住む家には20万種もの生き物が生息しているという。その4分の3はホコリ、人体、水、食品、および腸内で見つかった細菌で、およそ4分の1が真菌(カビ)、残りがゴキブリやカマドウマなどの節足動物、植物…
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「誰がために医師はいる」松本俊彦著
30年以上前「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」というCMがTVで流れ、「薬物依存者=人間をやめた人たち」という刷り込みがなされた。1990年代末ごろからは、全国の中学・高校で「ダメ。ゼッ…
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「計算する生命」森田真生著
古代メソポタミアでは、「トークン」という粘土片が数量を把握し記録するのに使われていたという。しかし、それは異なる形状のトークンが管理する内容物を示すだけで、具体的な1と2といった数量を表すのではなか…
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「絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている」左巻健男著
水、空気、土、石、木、金属、紙、ガラス……我々の周囲には多種多様な物質があふれている。それぞれの物質には独自の構造・性質・化学反応があり、それを研究するのが化学である。学校で習う化学が苦手な人は、複…
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「ガリヴァー旅行記」ジョナサン・スウィフト著 高山宏訳
「ガリヴァー旅行記」との最初の出合いは、多くの人と同じように、海岸に全身を綱で固定されたガリヴァーが描かれた絵本だった。長じて、沼正三の希代のマゾヒズム小説「家畜人ヤプー」が「ガリヴァー旅行記」の第4…
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「『自分らしさ』と日本語」中村桃子著
自分のことを指す自称詞は、英語では「I」ひとつだが日本語には「わたし、あたし、ぼく、おれ」などいくつもある。この自称詞の多さは語彙の豊かさとみられる半面、制限される面も出てくる。例えば「わたし、あた…
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「虫たちの日本中世史」植木朝子著
世界を覆う腐海から瘴気(しょうき)が立ち上りマスクなしでは生きられない――コロナ禍の現在を予見したとして「風の谷のナウシカ」、ことに文明が崩壊した後の世界観がより強く打ち出されたマンガ版の再評価が高…
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「日本外食全史」阿古真理著
現今のコロナ禍においてもっとも深刻なダメージを受けているのは外食産業だ。2020年の1年間に倒産した飲食店は780件と過去最高。売り上げは前年比84・9%、中でもパブ・居酒屋は50・5%と半減。 …
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「調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝」近田春夫著 下井草秀・構成
近田春夫に冠される肩書というとミュージシャン、作曲家、音楽プロデューサー、音楽評論家、タレント、さらには大学の元特任教授なども加わり、文字通りマルチに活躍する才人である。常に新しいことに挑戦している…
