十二の眼
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(115)金庫の中に大量の薬物と器具
永井が居間から、老人を連れてやって来た。 老人は永井に腕を支えられながら、なんとか立っている。庄子がしずかに振り返り、老人を睨む。 「あんたがこの家の家主か? 名前は」 「……飯…
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(114)じゃあ警察に連絡するか
「玄関の前に……こんなもん落ちてたんだけど」 庄子は指でつまんだ、パケ袋を老人に見せる。 老人は一瞬で、顔を歪めた。 「これ、覚醒剤だと思うのよ。おじいさん、これ、あんたの?」 …
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(113)混じりけ無しのクリスタル
夕刻十七時──。林檎は堂前と永井と一緒に、どこかへブツを調達しに行っていた庄子と合流した。合流場所は矢島紗矢が殺害された場所と、ほど近い場所だった。雨が降るなか、庄子はあたりを見回して、ポケットに手…
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(112)庄子って人、母さんの好みよ
「娘は、ちゃんとやってますか?たぶん元気と気合くらいしか取り柄はないですけど。あはははは!」 「お母さん。知恵も勇気もある刑事です。署としても助かってます。将来有望ですよ」 「あらー」 …
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(111)これ以上被害者を出すわけには
堂前は庄子と林檎から離れ、永井の名を呼んだ。 永井はうなずき、ふたりで大会議室を出て行った。 林檎は強張っていた肩の力が、一気にほどけた。 「大丈夫なんですか? すごいこと考え…
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(110)令状なんてひつようねえよ
それは堂前が渡部を「泳がせましょう」と言ったことに由来する。堂前ほどの刑事だ。4×3が渡部と接触することは、想定していたに決まっている。そこには、渡部への危険が伴うことも、承知していただろう。 …
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(109)次に狙う標的がいるはずだ
「フルフェイスは、助かります」 メットを被ると、誠はエンジンをかける。 「警察に停められたら、どうするんだ?」 「その時は、これでどうにかします」 誠はジャケットのポケット…
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(108)ようやくかよ 遅えよ
誠が独り言ちると、テレビ画面に目をむけながら、眉根に皺を寄せた。 「お……とうとう来たか?」 画面から機械音が聞こえ、アナウンサーが話を止めた。 画面の上に、「速報」の文字が浮…
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(107)出来ることは誠を資金面で支えること
「大橋さんが出してくれた、『おまえのその眼は……いったいなにを見てるんだ? って、超恰好いい!』『だったら4×3は12だから、12の眼って名前にしたらいいんじゃない!?』という書き込みのアイディア。あ…
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(106)渡部の遺体は見れましたか
大橋努は、机に並んだ三台のノートパソコンを操作していた。 六月十日、月曜日。 部屋にあるテレビからは朝の情報番組が流れていて、「十二の眼」の特集を組んでいた。埼玉県某所、山間にある一…
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(105)矢島の遺体から薬物反応が出たと発表
「……時間がありません。おそらく彼は──短期間での決着を狙っているはずです」 庄子も、前にいる麻布署署長に進言する。その背は、まっすぐに伸びていた。 「わたくしも堂前警部補と同意見です。…
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(104)犯罪はまだ序章に過ぎない
「二十五万円ほどだと」 「大橋努の背丈は」 「一七〇センチほどで、やせ型だそうです」 スクリーンに、働いていた当時の坂口誠、大橋努の顔写真が並べて映される。 みな凝視するな…
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(103)4×3と思われる人物が名前を変えた
昼になり、大会議室で捜査会議がはじまる。前方の長テーブルに座る管理官、警視庁刑事部長、副本部長、事件主任官──その表情には明らかに怒りが宿っていた。いいように4×3に手玉に取られ、警察組織が世間から…
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(102)テレビはさ、楽しいもんじゃないの
林檎は急に恥ずかしくなり、庄子の横へと戻る。庄子は山島に、「プロンプターを読むのはたいへんなのか?」「プロンプターを使わないときは、どうするのか?」「昭和のカメラの比率は、いくつか?」などいくつかの…
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(101)プロンプターっていうの見せてくださいよ
そのまま社員用のエレベーターに乗り、「十三階」のボタンを押した。 庄子が山島に声をかける。 「日曜日なのに、たいへんですね」 「……4×3の配信、観ましたよ。どうすんですか、あれ…
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(100)原点回帰してみるか
後部座席に座る林檎の耳に、前方からふたりの声が聞こえた。庄子も、黙ってフリージャズを聴いていた。やがて庄子が重そうに口を開く。 「どうするよ」 「多田野の孫とは……確かに面倒ですね」 …
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(99)古い一軒家が秘密の場所に
林檎は素早く話を戻す。 「永山さん。あなたの持論は著書でも買って読みます。とにかく矢島はどこへむかったんですか?」 「まず駅で防犯カメラがない場所はどこだ? 便所だよ。たぶん矢島は女子便…
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(98)矢島が探していたのはパトロン
すると堂前は永山の家が映るスマートフォンに言う。 「帰っていい」 ──わかりました LINE電話は、なにごともなかったかのように切れた。 永山は両手を首の後ろに回し、は…
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(97)庭を掘って出てきたものによっては
「オープンにいきましょう。あなたもどうせ、この部屋のいまの様子は録画してますよね? 非公式な聞き取りになりますが、お互い後々に言った言わないがないように、こちらも録音させてもらいます。庄子さん、一之瀬…
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(96)あまりにも非日常な空間
以前に庄子から聞かされていたとおり、まるでゲートのようないくつもの扉を超えると、六本木ヒルズレジデンスの二十九階にある部屋にようやく着いた。林檎はあまりにも非日常な空間に息を呑んだが、態度に出さない…
