十二の眼
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(143)堂前と共に桜田門へ
相反するようなふたりの刑事だったが、堂前は庄子の思いを引き継いでいた。林檎はその言葉を聞いて流れてきてしまいそうなものを、必死に止めた。 「腹が決まったら、連絡をください」 堂前は庄子…
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刑事をつづける気はありますか
連行される永山は自分を撮影するカメラに向かって、「裏切者!裏切者!」と叫んでいた。それは間違いなく、堂前に放った言葉であろう。そして後日、捜査一課の永井が麻布署に現れた。用件は十二の眼の捜査中に、庄…
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(141)…甘いな、林檎
林檎は答えない。 「いいか? こういう場合は人質の安全確保が第一優先事項だ。おれが副社長を撃つかはわからない。取りあえずこの場の出演者が何人いるか、おれが撃てそうな距離に誰がいるか、冷静に考え…
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(140)銃口を向ける手が震える
だが林檎は、冷静にスマートフォンから聞こえる坂口の声を聞きながら、アクセルだけを踏み込んだ。そして言った。 「……いつから庄子さんが十二の眼だと気づいていたんですか?」 堂前は黙って、…
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(139)殺された少女は庄子の婚約者
「先ほど、東都テレビの副社長から署に電話がありました。『庄子警部補に、十二の眼のことについてお話ししたいことがあるとご連絡していたのですが、日程の返事がなく、どうしたらよろしいか』と。どんな内容か話を…
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(138)十二の眼の捜査資料だよ
庄子が答えると、段ボールのなかから「ありがとうございました」と彼の声が聞こえた。 東都テレビの玄関前には三名の警察官が警備していて、そのうちのひとりは麻布署の人間だった。彼が車のなかの庄子に…
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(137)最終目的地は東都テレビ
「……この世にはね、事件にすらなっていない完全犯罪なんて、検挙している数の三倍はある。複数犯が難しいのは、その罪に対する重しがそれぞれに違うからだ。そしてだいたい誰かが足をつけたり、金銭の欲をかいて失…
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(136)殺せないですかね
そして互いに自己紹介をして、三人は一緒に帰ることになった。坂口は頻繁にあちこちの被害者の会に参加していて、何回かそのなかにいる庄子を見かけて、覚えていたという。大橋も坂口と会で顔を合わせるうちに自然…
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(135)別の会にも参加していましたよね
そしてその殺人事件の判決は、事件当時の被告人の心神喪失が認められ減刑された。「責任能力の有無」……まさに時代の変化と共に近年増えつづけている減刑の理由だ。法廷で庄子に会釈をしてきた被害者の妻は、憔悴…
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(134)坂口誠との出会いは2年前
法定速度を順守しながら、庄子はハンドルを握った。後部座席には坂口がいる。先ほど高輪の廃墟と化した一軒家から、その身を拾った。もちろんその一軒家も、坂口が警察に追われたときのために、庄子が事前に探して…
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(133)林檎のことは──頼んだぞ
堂前が、自分のスマートフォンを手繰る。すぐに先ほどこの茂みで坂口に電話をしていた自分の声が聞こえた。仕掛けられた盗聴器で、録音された自分の声。 〈──もう、やめよう。これ以上やる必要はないじゃ…
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(132)スマホを地面に置いてください
「坂口誠が所持していた拳銃も疑念のひとつでした。いくらネットの時代になったとはいえ、易々と本物の拳銃を手に入れることなどできない。それができる人間は、やくざもんか警察組織の人間です。協力者を飼ってる、…
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(131)庄子こそが十二の眼の中心
正直に告白した。庄子も……十二の眼のひとりだった。 堂前が切なさを浮かべた顔で、じっと見つめる。 その視線は、庄子がいつも立つ茂みの奥に向けられた。 「そのイヤホン、音楽じゃね…
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(130)嫌な予感がしてたんだよ
──一夜明け、六月十二日、水曜日となった。午前四時。 林檎は帳場で、座っていた。 ただひたすらに、坂口誠を捕まえることだけに集中する。が、なにひとつ頭のなかに光はささなかった。庄子は…
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(129)捜査員の皆さん、聞こえてます?
その時だった。「すぐに帳場へ戻れ」と廊下の先で捜査員が四方に叫んでいる。三人が急いで大会議室に戻ると、尋常ではない緊張感が部屋を包んでいた。 中央に捜査員たちが集まっている。永井がこちらを向…
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(128)自信など刑事は持つ必要はない
林檎はぽつりと呟いた。 「このフリージャズは、終わりがあるんですか?」 堂前は優しく微笑み、うなずく。 「終わらない旋律はありませんよ」 「そうでしょうか……わたし、自信が…
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(127)画像には配信する大橋の姿
庄子は最後の力を振り絞るように、呟く。 「あの薬物が押収された秘密の店は、多田野公平が裏で経営しているのか?」 「……そうかもしれないけど、詳しくはわからない」 「坂口麻奈美さんを…
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(126)命が惜しければ話せることは話せ
「じゃあいい、こっちだけ答えろ。矢島紗矢と仲が良かったな? 大学時代、おまえの親父が持っていた千葉県の別荘に、矢島と行ったな?」 男はそこまで知られていることに驚愕したように、口を開けては閉じ…
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(125)苦労のくの字も浮かんでいない青年
──大橋がライターで火を灯す。 あっという間に、炎が彼を包んだ。 やがて仏のように背を正して座っていた大橋の躰は前方に倒れ、炎は部屋をも燃やしていった。 コメント欄が火事場見…
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(124)渡部亨がひたすら憎かった
大橋は淡々とカメラに向かって話しつづける。その表情はこの状況を達観しているかの如く、落ち着き払っているように林檎には見えた。スクリーンのなかの大橋の声が帳場に響く。 「自分がしていることは間違…
