映画「ポンペイ、雲の下に生きる」世界全体が夜の海の底に沈んだような不思議な感覚
「ポンペイ、雲の下に生きる」
過去の常識をくつがえす激しい天災の相次いだこの夏。国内もさることながらネパールの大水害には、人間の文明など一瞬でひとのみにする猛烈な自然の力を誰もが改めて認識させられただろう。
先週末封切られた「ポンペイ、雲の下に生きる」は西暦79年、ベスビオ火山の大噴火で溶岩流にのみこまれた古代都市をめぐるドキュメンタリー。
監督はジャンフランコ・ロージ。映像の文体師とでもいったらいいだろうか。
現実の退屈な時間や疲れたような空間が、この人の手にかかると美的で神秘的な映像空間に変じてしまう。古代ローマで栄耀栄華を極めたポンペイも、いまでは火山灰と溶岩流に埋まった遺跡があるだけ。映画はナポリ湾に面したポンペイの遺跡と隣町のナポリを行き来するが、それはいわば2000年の時の隔たりを往還するのと同じだ。
ロージは地中海の太陽に魔法をかけたようなモノクローム映像でポンペイとナポリ、ふたつの時空をシームレスにつないでしまう。現地で発掘する東大考古学チームの日本語まで聞こえるが、なんら違和感がない。題名は「雲の下」だが、まるで世界全体が夜の海の底に沈んだような不思議な感覚に包まれる2時間だ。
ポンペイといえば「最後の日」が決まり文句。過去に何回も映画化された物語は英国人作家エドワード・ブルワー=リットンの長編小説「ポンペイ最後の日」(幻戯書房 上・下各4400円)である。
作者は19世紀初頭に生まれて探偵小説やSF小説の最初の世代でもあるが、ちょっとデカダンを感じる文章の彩と味つけが、最後に大噴火にのみこまれるさまざまな人生の波瀾万丈を絵巻物のように描き出す。
日本初の全訳で作者が小説作法を詳しく解説する長い序文まで読むことができる。ここも読みでがあっていい。 <生井英考>



















