「オデュッセイア」全編IMAX! トロイの木馬とその後の英雄譚
「オデュッセイア」
小さなころはスペクタクル史劇の全盛期で、「十戒」や「ベン・ハー」などが映画館にかかるたび、家族で見に行くのが習わしみたいだった。
旧約聖書の出エジプト記で紅海が真っぷたつに割れるエピソードなどは「十戒」の特撮場面で知ったという人も少なくないだろう。
そういうスペクタクル映画の現代版が来週末封切りの「オデュッセイア」。IMAX版70ミリフィルム映画というのだから、いまどきの子どもにも驚きのサイズに違いない。
物語は古代ギリシャ、トロイの木馬とその後の英雄譚。ホメロスの有名な古代叙事詩はトロイを攻略したオデュッセウスが艱難辛苦の旅の途上、次々に冥界魔界をくぐりぬける話だ。もちろん特撮はつきもので、1つ目の巨人や6つもアタマのある人食い鬼が出てくるが、大人の観客には大のCG嫌いというクリストファー・ノーラン監督肝いりのエーゲ海を渡る実物大の船団や大嵐の場面が見ものだろう。日本映画の貧相な特撮とは明らかにけた違いだ。
ただし、これが昔のスペクタクル史劇の再来かというとちょっと違う。なにしろこの映画の古代ギリシャ人は典型的なアメリカ英語をしゃべり、オデュッセウスも息子に「ダディー」と呼ばれるし、突撃命令は「OK、レッツゴー!」だ。主演のマット・デイモンも、まるでイラクかアフガンで傷ついた米兵みたいなのだ。
おかげでアメリカでは脚本を頭ごなしに批判した古代ギリシャ語学者と擁護派の有名作家の間で論争まで起こったという。作家は日本でも知られたジョイス・キャロル・オーツ。彼女自身、小説「ブロンド マリリン・モンローの生涯」(講談社 上下巻各2970円)では評伝形式で事実とは違うマリリン像を描いて論議を呼んだ。まるでトランプ支持者と反対派の論争みたいな構図と、それ自体が話題なのだそうである。
〈生井英考〉



















