映画「美しく、黙りなさい」70年代半ば、女優が“写す”側に回ったドキュメンタリー

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「美しく、黙りなさい」

 来週末封切りのデルフィーヌ・セリッグ監督「美しく、黙りなさい」が面白い。

 題名は欧米の映画業界で女優が聞く決まり文句。「つべこべ文句を言わず可愛くしてればそれでいい、黙ってろ」という意味だ。こんな業界慣習を疑問視した女優が1970年代半ば、「写される」側から「写す」側に回ったドキュメンタリー。それが50年の時を経て修復公開される。

 要はフェミニズム高揚期の性差別告発だが、説教くささがないのは同じ立場にある者同士のくつろぎのおかげ。監督はフランスで定評のあった女優だが、まずハリウッドに渡り、多数の女優にカメラを向ける。

「もしあなたが男だったらこの仕事を選んだ?」

 その後、パリで同じ質問をする。答えは──ほぼ全員がそろって「そりゃ女優より映画を作る側になったわ」。

 それを皮切りに計23人から続々出るのは告発というより仕事のぼやきと嘆き。半人前扱いへの女たちのウンザリ感があらわで、仕事上の対人関係で苦労した大人の男なら誰しも容易に見当がつくはず。

「#Me Too」運動以来、映画業界のセクハラが初めて暴露されたかのような誤解があるが、実は24年前にも女優ロザンナ・アークエットが本作と同じ主題でドキュメンタリーを自主製作したことも忘れられているのだろう。

 むしろ気になるのは、この映画が製作された70年代という時代の社会変革やマイノリティーの主張などの可能性が、21世紀の今日、反動的な逆風にさらされていることだ。たとえば原発廃止で先陣を切っていたドイツが、ここにきて原発再建へと急に舵を切り直したのはそのひとつだ。

 日高勝之編著「1970年代文化論」(青弓社 1980円)は「脱・政治の季節」の日本を世代や家族や性や政治やメディアなど種々の論点で振り返った社会学の論集。ここにも反動の芽が潜んでいたことがいまならわかる。 〈生井英考〉

◆24日からBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開

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