映画「軍服を着た神様」 戦時中に撃墜された日本海軍飛行兵曹長を祀る
「軍服を着た神様」
日本の8月は戦争の季節だが、こういうのも「軍神」になるのだろうか。台湾には日本の軍人が神様になって祀られている例がひとつならずあるのだそうだ。
今週末、8月最初の日に封切りの「軍服を着た神様」はこの奇妙な現象を伝えるドキュメンタリーである。
たとえば台南の街はずれにある「飛虎将軍廟」は、戦時中に撃墜された日本海軍の飛行兵曹長を祀った施設。軍服と軍帽の神像が鎮座し、飛行服姿の本人の写真まである。
また南部の枋寮という町のはずれには台湾植民地の行政官だった田中綱常という軍人の廟があり、これは田中の霊が地元の女性に憑依して託宣を語ったことで信徒が集まって建立したのだという。1980年代のことだから戦後もすでに40年後の話である。
もっともこれらを“親日台湾”の表れと見るのは早計だろう。このときの撮影行をお膳立てした人類学者の三尾裕子編著「台湾で日本人を祀る」(慶応義塾大学出版会 5940円)によると、そもそも日本人戦死者は鬼になってたたると恐れられたが、道教神の保生大帝の許しを得て神様に認定してもらうというローカルな信仰上の段取りがあったらしい。おまけにこうして地位を得た日本由来の神様は、地元の民の目には宝くじの御利益を当てこんだ信心の的として手ごろな存在だったという。
要するに軍神というより、いろいろあった歴史をパパッと暮らしに組み込んだ庶民の手料理みたいなものなのだ。
こういう愉快な経緯の奥行きが惜しいことに映画ではもうひとつ伝わらない。遠藤協監督は上記の論集にも一文を寄せて「民族誌映画」の志を述べているが、何に遠慮したのか表面的な話題の面白さ以上の深みに連れていってくれない。せっかく「鬼(クイ)から神(シン)への現代人類学」(論文集副題)の一環なのだからもう一息、気合を見せてほしかったな。 〈生井英考〉
◆8月1日からポレポレ東中野ほか全国順次公開



















