映画「ハート・オブ・ビースト」アラスカで帰還兵と愛犬がサバイバルに挑む
「ハート・オブ・ビースト」
あらゆる動物の中で犬は最もヒトに近しいのだそうだ。それが戦友ともなればなおさらだろう。25日封切りの「ハート・オブ・ビースト」はそういう話である。
主演はブラッド・ピット。若いころのイケメンぶりはどこへやら、ジジイに片足突っこんでからは汚れ役が板につきすぎるほどだが、にしても今回は特段。無精ヒゲの丸刈り頭で手の甲にまでタトゥーを入れた初老のブラピがシェパードと旅をするのだ。
犬の名はオーディン。よく見ると右前肢が義足だ。
劇中に解説はないが、「オーディン」は北欧神話の神。知恵の神にして戦の神で、しかも片目がない。ブラピ演じる主人公は対テロ戦争に出征した元特殊部隊の帰還兵でオーディンは生死をともにした元軍用犬というわけである。
物語では彼らが旅先のアラスカの原野で事故に遭い、命からがらのサバイバルを余儀なくされる。つまりアクションアドベンチャーだが、ブラピもオーディンもPTSDで悪夢にうなされる。そのつど彼らがお互いを思いやる姿は、芝居とわかっていても犬好きの心をえぐるだろう。
以前、ベトナム戦争中に軍用犬の担当だったという米陸軍の元軍曹に話を聞いたことがあるのだが、文字通りヒトと犬が一体になる回想に聞き惚れたものだった。
アメリカではよく犬を連れた旅人を見かける。家族連れや夫婦など多彩だが、男のひとり旅の道連れが犬というのはある種の理想らしい。
有名なのはジョン・スタインベック著「チャーリーとの旅」(青山南訳 岩波書店 1364円)。1960年、大統領選で世論が(当時としては)かつてなく対立的なのを憂えた老作家がキャンピングカーで老犬と長い旅に出る。人種統合に抗議する女たちの集会など、今日の社会分断に通じる挿話がちらほらあったことに、いまさら気づいて驚くのである。 <生井英考>



















