あと3年かもしれないと…精神科医で俳優の楠部知子さん多発性骨髄腫を語る
がんの女優3人でユニットを結成
すっかり記憶から遠のいていたのでネットで検索をかけてみると「5年生存率は約50%」。診断されずにいた2年間を除いたらあと3年かもしれないと、チラッと脳裏をよぎりました。
大阪のがん専門病院の初診で「マルク(骨髄穿刺)」という骨髄を採取する検査をされました。その後の検査で診断が確定し、「週明けすぐに入院するように」と電話がかかってきました。真っ先に気になったのは受け持っている患者さんのこと。長期入院が予想されたので週末の間に急いでカルテにサマリー(引き継ぎの医師への患者さん情報)を書き込む事務作業をしました。
入院したのは23年5月1日です。初回抗がん剤投与の後には、副作用の調整のための入院、自家移植のための骨髄採取など、24年2月に骨髄幹細胞移植を終えるまでに計5回の入退院を繰り返しました。治療に伴う副作用についてはある程度理解していましたが、その苦しさは例えようのないものでした。
「せっかくがんになったのだから」とキャンサーズ(がんの女優3人で結成したユニット)でYouTubeを立ち上げ、それがきっかけで映画を作ろうと思いつきました。多くのスタッフやキャスト、支援者さんに支えていただき、無事、「小春日和~Indian Summer~」を完成し、劇場公開することができました。本当に感謝しかありません。
治療をしながらプロデューサーとして飛び回っていたので、元気そうに見えても自己免疫力が落ちているため帯状疱疹になったり、ぜんそくを起こしたり……。でも、好きなことをするのが自己免疫力をアップさせると信じて、楽しんでやっています。
この映画は「何か困難があっても、きっと次の道が開ける」「前を向いて一歩踏み出したら、何かがある」という私の実体験と思いを込めた映画です。がんにならなかったら、YouTubeも映画も作ろうとは思いませんでした。でも映画を作ったことで、がんを経験しなければ出会うことのなかった多くの人とつながって、新しい世界が広がりました。
じつは今年、神戸で開かれたがんサバイバーによる漫才イベント「S1グランプリ」に参加したのです。それがきっかけで、漫才コンクール「M-1グランプリ2026」にも挑戦して、なんと「ナイスアマチュア賞」をいただきました(笑)。
精神科医の私ががん患者になり、映画プロデューサーになり、漫才をするなんて……自分でもビックリ! 「次は何になるかな」と病気を楽しんでいる毎日です。
(聞き手=松永詠美子)
▽楠部知子(くすべ・ともこ)1960年、愛知県出身。フリーランスの精神科医として病院や児童相談所などに勤務しながら、俳優、MC、医療監修もこなす。がんの女優3人で「キャンサーズ」を結成し、YouTubeで治療経過などを発信。現在、全国で順次上映中の映画「小春日和~Indian Summer~」ではプロデューサーを務め、出演もしている。10月3日(土)~9日(金)に大阪「シアターセブン」でアンコール上映が予定されている。
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