可児才蔵(1)柴田、明智、前田、織田…なぜ主人を頻繁に替えたのか
となると、もう一つの可能性が浮かびます。腕は確かだが、性格に難があった。あいつとは一緒に仕事ができない、と周囲から敬遠される。そういう人、今もいますよね。一つの家中、一つの会社に居場所がつくれない。才蔵もそういう人物だったのではないか、という推測です。
ところが、戦場に出た才蔵の腕前は尋常ではありませんでした。天正10(1582)年、織田家が武田家を滅ぼした戦いでは、森長可に仕えています。長可は信長の小姓として有名な蘭丸の兄。森隊は信濃での戦いで460余の首級をあげ、首実検を行いました。すると29歳の才蔵が3つの首をぶら下げて現れ、「16の首を取りました」と報告します。
持ってきた首は3つではないか、と長可が訝しむと、才蔵は「重いので残りは捨てました。ただし、それらの首には笹の葉を含ませてあります」と説明しました。調べさせると、本当に笹をくわえた13の首級が見つかった。この逸話から、才蔵は「笹の才蔵」と呼ばれるようになったといいます。
この話そのものは後世の武勇伝として慎重に扱う必要がありますが、才蔵の名声が何によって形づくられたのかはよく分かります。軍勢を巧みに指揮したとか、作戦を立てて敵を破ったという話ではない。とにかく自分で敵の中へ飛び込み、自分の手で首を取る。その個人的な戦闘能力こそが、才蔵最大の売り物でした。
そう考えると、主人を転々とした経歴はいっそう不思議になります。これほど使い道のはっきりした武者なら、大名としては手元に置いておきたいはずです。それでも定着しない。才蔵の生涯を追うときには、この「強いのに長続きしない」という奇妙な組み合わせを頭に置いておく必要がありそうです。
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