週間読書日記
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中野純(闇案内人)
9月×日 夏は闇歩きガイドの繁忙期で、いろんな人を夜の山へ案内したが、秋雨前線がやってきて一段落。桔梗色のカバーが印象的な谷口義明・渡部潤一・畑英利著「天文学者とめぐる宮沢賢治の宇宙 イーハトーブから…
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稲葉稔(作家)
9月×日 1行どころか1字も書けず、仕事場から退散。自宅に帰ってごろりとなり、結城真一郎著「#真相をお話しします」(新潮社 1705円)をぱらりと開く。現代推理だ。SNSやスマホを使った仕掛けや、布石…
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本橋信宏(ノンフィクション作家)
9月×日 日頃、韓国に配慮した意見を言うと、「反日」と非難する保守政治家が、どういうわけか旧統一教会の話題が出ると押し黙る。韓国人教祖を「お父様」と呼び、その夫人を「マザームーン!」と絶叫する自民党議…
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北尾トロ(ノンフィクション作家)
8月×日 酷暑が盛りを過ぎ、朝晩が涼しくなってきた。趣味でやっている野菜作りも、トマトやキュウリが枯れてきて、元気なのはナスとオクラくらいだが、収穫量はともかく畑にいるだけで気分がいい。コロナ禍で家に…
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森達也(映画監督)
8月×日 芥川賞を受賞した「おいしいごはんが食べられますように」(講談社 1540円)を読む。著者は高瀬隼子。大きな物語ではない。ごく普通の会社。ごく普通の社員たち。メインは20代後半の男性社員と2人…
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竹倉史人(人類学者)
8月×日 警察署に国際免許証を取りに行く。次回作「続・土偶を読む(仮題)」の取材で、来週からヨーロッパ各地を訪れる。「土偶を読む」(晶文社)では縄文時代の土偶が「植物の仮面を装着した精霊像である」とい…
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黒木亮(作家)
7月×日 久しぶりのスコットランド旅行で、ネス湖をみる。人里離れた山奥にある霧がかかった湖で、何かがいても全然おかしくない雰囲気。家族も職業も捨て、湖畔に小屋を建て、1991年からネッシーを捜し続けて…
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一ノ瀬俊也(埼玉大学教養学部教授)
8月×日 陸上自衛隊が舞台のテレビドラマを観ている。いわゆる落ちこぼれ男子たちの青春物語で、女性はというと「美人」と呼ばれる教官が1人。彼女は隊員たちの成長に一定の役割を果たすが、しょせんは「紅一点」…
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早見和真(作家)
7月×日 2008年に東京都新宿区で小説家としてデビューして、地方を転々としたあと、この春、およそ13年ぶりに東京に戻って来た。 やれ「水がまずい」だの「空気が汚い」だのと言うつもりはないが、…
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沢野ひとし(イラストレーター・エッセイスト)
7月×日 この数年視力の衰えが加速している。白内障の手術を受けたが、別の目の病気が忍び込んできた。70代の半ばを過ぎるとやはり足腰も弱り、不平不満の日々。 7月×日 響林社の大活字本を愛読してい…
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山上たつひこ(漫画家)
7月×日 「ダダ」運動の創始者フーゴ・バルの日記「時代からの逃走」(みすず書房 現在は絶版)を何十年ぶりかで読む。言葉と像の変革運動をつづった書物に日本人の姿がちらりと見える。 1914年ミュ…
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鏑木蓮(作家)
7月×日 今年は私の住む京都以外でも、連続猛暑日が続いている。心療内科医本宮慶太郎シリーズ第2弾「見えない階」(潮出版 880円)が現在書店に並び、最新作「見習医(けんしゅうい)ワトソンの追究」(講談…
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宮内悠介(作家)
6月×日 難民支援のための募金をしたところ、国連UNHCR協会からめちゃくちゃレターが来るようになった。そのなかにひとつ、「With You」6月号なるニュースレターがあった。読んでみると興味深い。こ…
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あさのあつこ(作家)
6月×日 5月の終わりから6月の初めにかけて、わたしの住む中国山地近くの町は、田植えの季節を迎える。田圃に水が入り、小さな苗が植えられ、ツバメたちが鳴き交わしながら舞い飛ぶ。 一面に水の入った…
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岡崎武志(書評家)
6月×日 梅雨入りも間近。束の間の晴天はありがたく外出する。さいたま市別所沼公園へ。ここに詩人の立原道造「ヒアシンスハウス」がある。立原は東京帝大で建築を学び建築事務所に勤めた。1939年に結核で病没…
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岩井三四二(作家)
5月×日 某所書店併設の喫茶店で某社編集部と打ち合わせ。1年前はZOOMでやりとりしていたのを思えば、日常がもどりつつあると感じる。といってもマスクははずせず、暑苦しさはつづく。帰りがけにその書店の新…
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新井見枝香(書店員・エッセイスト・ストリッパー)
4月×日 2週間ほど前に受けたリンパマッサージによる内出血がようやく消えた。踊り子の先輩から、池袋北口の中国系エステサロンを勧められたのだ。中国人の先生は「小顔に…」という私の控えめな希望を聞き流し、…
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西條奈加(作家)
5月×日 ゴールデンウィーク中、ほぼ3年ぶりに友人と旅行に出た。行先は長野。連休中だけにどこも混んでいて、善光寺や松本城は長い行列ができていた。待つのも行列も苦手だが、未だコロナ過から抜けきれない状況…
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佐川光晴(作家)
5月×日 昨秋、26歳の長男が国家試験に合格して独り立ちした。この春には小学校教員の妻が定年退職し、18歳の次男が大学に進んだ。主夫として、長きにわたり、家事育児に勤しんできた当年57歳の小説家は、節…
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倉阪鬼一郎(作家)
4月×日 埼玉県で行われた戸田・彩湖フルマラソンに参加。コロナ禍で2年半ぶりのフルマラソンになる。フル89戦目だが、こんなに間隔が空いたのは初めて。当日は夏日で、まだ暑熱耐性ができていない時季には厳し…