38度線突破の北朝鮮兵士を描く「脱走」。襲ってくる困難の衝撃

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「脱走」新宿ピカデリーほか全国ロードショー中

 映画の惹句に「ノンストップ」という文言が使われることがある。「ノンストップ・ポリティカル・アクション」とか「ノンストップ・トレジャー・アドベンチャー」などだ。次から次へと見せ場が訪れるという意味である。この「脱走」もノンストップで話が展開していく。まさに見どころの連続。しかもカメラワークが秀逸なため居眠りもできない。「脱走」は「脱北」を表している。

 朝鮮半島を割する北緯38度線。休戦ラインを挟んで韓国軍とにらみ合う北朝鮮軍の最前線部隊でイム・ギュナム軍曹(イ・ジェフン)は10年の兵役を勤め上げ、除隊を目前に控えていた。だが彼はある決意を抱いていた。

「南へ行く。自分が望むように、生きたいように生きる」

 ギュナムは皆が寝静まった時刻に兵舎から抜け出して脱出ルートを確認。地雷原の地図を作り、入念なリハーサルを繰り返して越境計画を練り上げていた。

 決行の日が近づいたとき、不測の事態が持ち上がった。始まりは天候。雨が降れば地雷避けの目印が流されてしまうのだ。しかも計画が後輩の兵士ドンヒョク(ホン・サビン)にバレてしまった。彼もまた脱走を熱望し「連れて行って欲しい」と懇願する。ギュナムが断るとドンヒョクは単身で脱走を試み、そのあおりでギュナムまで逮捕されてしまう。

 翌日、脱走事件を調査するため保衛部少佐リ・ヒョンサン(ク・ギョファン)が部隊にやってくる。将来を約束されたエリート軍人のヒョンサンはギュナムの幼馴染み。彼は尋問されたギュナムを「脱走兵を捕らえようとした英雄」として救い出し、自らの部下として飼いならそうとする。極刑のピンチを免れたギュナムは代わりに最悪の状況に追い込まれるのだった……。

 劇中に掲示される北朝鮮政府のスローガンは「人民の自由と平和」だが、実際は自由は大きく制限されている。平和という点では先ごろ北朝鮮兵士がロシア軍の一部としてウクライナ侵略戦争に駆り出されて全滅したとのニュースも流れた。言葉と現実は大違いだ。だからギュナムは南朝鮮つまり韓国に逃れて幸せをつかもうとする。

 だが脱北は命がけだ。なにしろ脱北を企てた者を捕らえただけで英雄になれる国柄。簡単に願いを叶えられるはずがない。ネタバレになるので詳しくは書けないが、ギュナムは次から次へと困難に直面。ドンヒョクの面倒をみながら、頭の良さと高い戦闘能力で試練を切り抜けていく。

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