NYの救急救命隊を描く「アスファルト・シティ」人間を性悪説で喝破した救いようのない物語

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 救急救命の映画といえば、日本では2023年公開の「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」がある。鈴木亮平演じる熱血感が災害の現場に乗り込み、命がけで人々を救う物語。英雄を讃えるストーリーがいかにも日本的だった。

 この「アスファルト・シティ」は米国映画だけにかなり趣が違う。ニューヨークを舞台に救急救命隊員の活動を描いてはいるが、隊員とケガ人たちを性悪説の視点で描写。なんとも救いようがない。だから見応えがある。

 ニューヨーク市消防局の救急救命隊で働き始めたクロス(タイ・シェリダン)は銃撃戦の現場に投入される。阿鼻叫喚の状況に呆然とする彼は、ベテラン隊員のラット(ショーン・ペン)の指導で重傷者を救急車に乗せるが、患者は病院に着く前に心肺停止に陥ってしまう。

 翌日からクロスはラットとコンビを組むことに。犬に噛まれた少年の手当てに出動すると、目の前で逆上したチンピラに犬を射殺される。救急車の中では女性から汚い言葉で罵られる。かくしてクロスは自分の無力さを感じ、心が折れそうに。

 チャイナタウンのボロアパートに暮らすクロスにとって救急救命隊は最終目的ではない。実は医科大学を目指して勉強中だ。一方、ラットには別れた妻ナンシー(キャサリン・ウォーターストーン)と幼い娘がいた。彼にとって娘に会うことが唯一の喜びだった。

 そんな中、妻がケガをしたという男の連絡でアパートに駆けつけると、妻の顔は無残に変形。夫にDVを受けたのは間違いなかった。夫は手当の邪魔をし、苛立ったラットは夫といざこざを起こした上に駆けつけた警官と衝突。その結果、謹慎処分を受ける。

 謹慎が解けて職場に復帰したラットはクロスと妊婦の部屋に向かい、運命を変える行動を起こしてしまうのだった……。

 ラットは救命の現場では適切な判断を下し、人命を救うことに最善を尽くす。だが実生活では幾多の妻と離婚を繰り返した過去がある。言動も不良ぽい。いわばやさぐれ男だ。また、クロスの先輩のラフォンテーヌ(マイケル・ピット )は職業的な倫理観などさらさらない。人命を救うという崇高な職業の裏側では、働く人々の心が荒廃しているのだ。ただし、その気持ちもわからぬではない。

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